メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

雪のイスタンブール

イスタンブールは昨日からとうとう雪になった。
昼、カドゥキョイ辺りにいた頃は、車のボンネットの上などに雪が積もっている程度だったが、学校帰りの子供たちは、その雪をかき集めて、雪合戦に興じていた。私の頭にも一つ命中した。
昼過ぎ、ヨーロッパ側のタクシムに出たら、広場の芝地には、もう雪が積もっていた。
夕方、カドゥキョイに戻ってきて、時計を見たら、8時10分前だったけれど、カドゥキョイ始発で、ウムラニエを経由する14番バスの停留所に急いだ。
ウムラニエ辺りの道路は夕方混みあうので、8時ぐらいまでだったら、ウムラニエを経由しない19E番のバスに乗り、それ以降は、走行距離が短いウムラニエ経由の14番という目安だが、昨日はちょっと早かったのに何となく14番にしてしまった。
そしたら、14番のバスが30分待っても来ない。雪の中を並んで待っている人たちは、皆、苛立った表情で、バスが来る方向を睨んでいる。睨むとバスが早く来るわけじゃないが、私も一緒になって睨んでいた。30歳ぐらいの女性は、その美しい顔を引きつらせて、「運転手、途中でくたばったんじゃないの!」と毒づいた。
40分経った。私の前に並んでいた若い男は、さきほどから携帯で話していたが、電話を切ると、私の方を向いて、「どうやら、ウムラニエが大渋滞で、バスがこっちへ来れないようですね。」と言った。
「ウムラニエは両方向とも渋滞なの?」
「ええ、そのようです」
「それじゃあ、やっと来たバスに乗っても、またウムラニエで渋滞じゃないですか?」
「そうなんですよ。来るのも行くのも大変・・・」
「君は何処まで行くの?」
「イエニドアン」
それで、私もこの若い男に一つ提案した。
「それなら、19E番の方が良いかもしれない」
「はあ、でも19E番は未だあるの?」
「9時までは確実にあったと思う。私は19E番で行くことにしたよ」
すると、若い男もにこっと笑って、「よし! そうしよう。このまま待っていたら、凍り付いてしまう」と言い、二人して300mほど離れた19E番の始発停留所に向かって歩き出した。
歩き出して、呼ぶ声に振り返ったら、私の後ろに並んでいた50年配の男が、「私も19E番にするよ」と笑いながら駆け寄ってきた。
それから、3人で声を掛け合いながら、走るように歩き始めたら、なんとなく快活な気分が漲って来たけれど、心中、『さあ、今日は何時に帰りつけるのか解ったものじゃないぞ』と気を引き締めていた。
19E番の停留所に来てみたら、もうバスが停まっていて、その上、乗客も殆どいないガラガラの状態で、『まあ、座って行けるなら、2時間でも3時間でも大丈夫だ』と安堵した。一度、19S番というバスだが、カドゥキョイからイエニドアンまで、2時間50分掛かったことがある。
しかし、昨日は、雪の中、バスは快調に走り続けて、9時45分にはイエニドアンに着いてしまった。狐につままれたような気分だった。