メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トランプ大統領:「3千年来果たせなかった中東の平和を実現させる」?

トランプ大統領は本当に平和を望んでいるのか? これについてはトルコでも様々に議論されている。

懐疑的な人たちの中には、結局、トランプ氏も所謂「ディープ・ステート」とグローバル資本に取り込まれてしまい、米国の覇権による一極支配とイスラエル支援を継続せざるを得ないだろうと主張する人もいる。

一方で、トランプ氏は粘り強く、平和の実現による米国の覇権縮小と多極化への移行を目指しているが、国内の覇権主義者やグローバル資本と闘わなければならないため、イスラエルウクライナを支援して戦争を拡大させるかのような発言で煙幕を張っているのだと解説されたりもする。

トランプ氏の発言はころころ変わるから、発言を聞いても意味がない、実際に何が進められたかを注目すべきと論じる人たちは双方にいる。

確かに、ウクライナに対して戦争の拡大を煽るかのような発言を試みたかと思ったら、一転してトマホークは供与しないような発言に変わる。

しかし、希望的に見るならば、ガザでもウクライナでも戦争は終結する方向へ動いているように思える。

仮に、米国が覇権を縮小して、世界が多極化したとしても、米国はその中で最も強力な一極となり、負担の軽減によって繁栄を維持する。これがトランプ氏の言う「アメリカンファースト」ではないのか?

トランプ大統領はネタニヤフ首相に「世界を相手に戦争するつもりか?」と警告したが、米国もこれ以上一極支配を進めようとして、世界を敵に回すわけには行かないだろう。

まあ、トルコには、トランプ氏の「中東の平和」に関する「発言」に期待する人も多いので、こういった論説が多く見られるのかもしれない。

トルコの報道によれば、トランプ氏は「3千年来果たせなかった中東の平和を実現させる」と語ったそうだ。

トランプ氏の発言はころころ変わると共に、誤認や数字の誇張も甚だしい。

トルコ語では「40」という数字が、長さなどを強調する意味で使われたりするけれど、トランプ氏の「3千年」も、要するに「長い間」ぐらいの意味に受け取れば良いのではないか。

実際は、オスマン帝国の時代、中東は数百年にわたって平和が維持されていた。中東の混乱は、オスマン帝国が崩壊する過程の中で始まったのである。

これには、「イスラム世界を破滅させる」、あるいは「聖地を取り戻す」といった十字軍以来の西欧の野望が関わっていただろう。中東の平和を乱して来たのは常に欧米であると言っても良いと思う。

オスマン帝国の崩壊以来、中東では、トルコ人・アラブ人・クルド人といった主要民族の対立が続いた。これも欧米が意図した分割戦略によるものだったに違いない。

エルドアン大統領は、「オスマン帝国の時代、エルサレムでは、ユダヤ人とムスリム、クリスチャンが平和に共存していた」と述べ、再び平和共存が実現することを望んでいた。

トルコにも、ドウ・ペリンチェク氏を始めとして、イスラエル国家の存在自体を認めないかのような主張を明らかにする人は少なからずいる。しかし、そういったラディカルな傾向が主流を成すことは考えられない。

現在、トルコは、国内ばかりでなく、トルコ人・アラブ人・クルド人らが中東全域で平和に共存して交易するビジョンを描いているように思える。

これは「オスマンの平和」の復活と言えるかもしれないが、決して「オスマン帝国の再興」などではない。その中で、ユダヤ人やクリスチャン、イスラエル国家との共存も図られるのではないかと思う。