メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

強い主権国家として蘇りつつあるトルコ/果たして日本は・・・

2016年7月の「クーデター事件」の後か、あるいはもう少し前だったかもしれない。イスタンブールのカドゥキョイで、アナトリア通信のチーフカメラマンだった友人の他、2~3人の元アナトリア通信の記者らと飲んでいたら、その内の1人が「世界史上、デヴレット(devlet)と言えるような国はいくらもなかった・・」という蘊蓄を語り始めた。

トルコ語のデヴレット(devlet)は、辞書によれば日本語の「国家」に相当する。

はっきり覚えているわけじゃないが、彼は、ローマ帝国・中国の王朝・オスマン帝国ロシア帝国などを歴史上のデヴレットとして挙げ、現代では、米国・ロシア・中国のような大国と共にトルコもデヴレットの地位を取り戻しつつあるとしながら、日本をデヴレットとして認めようとしなかった。

その日本を見下したような言い方に、私は良い気持ちがしなかったものの、「酒席の雑談だから・・」と割り切って、特に反論もせずに話を聞いていた。

デヴレット(devlet)はアラビア語からの借用語で、例えば、オスマン帝国は「デヴレッティ・アリイエイ・オスマニイエ(دَوْلَتِ عَلِيّهٔ عُثمَانِیّه-Devlet-i Aliyye-i Osmâniyye)」 と称され、日本語には「オスマンの崇高な国家」と訳されている。

近年、トルコはロシアを始めとするユーラシアの国々との関係を強化しているため、「トルコは西欧から東へ軸を移そうとしている」と論じられているけれど、エルドアン大統領はこれに対して、「トルコは、世界の多様に異なる外交関係を国益に基づいて同時に進めながら、自分の軸を強化しているのである」と明らかにしていた。

つまり、トルコは西欧やロシアに寄り添うのではなく、自らを軸にして外交を展開させると言うのである。

このエルドアン大統領の発言に、私はアナトリア通信元記者の言葉を思い出して、『なるほどなあ』と思ってしまった。要するに、彼は「自らを軸にして展開できる強い主権を持った国家がデヴレット(devlet)である」と言いたかったのだろう。

日本は米国に依存して自分の軸を持たないから、確かにデヴレットではないかもしれない。それどころか、果たして「主権国家」と言えるのかどうかも最近は怪しく思えてしまう。

merhaba-ajansi.hatenablog.com