トルコの新聞アイドゥンルック紙(Aydınlık Gazetesi)で5月9日から「ドンバス日記」というレポートが連載されていた。
アイドゥンルック紙は親ロシア派の政治家ドウ・ペリンチェク氏の傘下にあると言っても過言ではない報道機関であり、「ドンバス日記」の筆者は、ペリンチェク氏の子息メフメット・ペリンチェク氏だった。メフメット・ペリンチェク氏は、現在、モスクワの大学で教鞭を取っているという。
9日の記事に少し目を通したところ、まず最初に「4月29日~5月1日、ロシア国防省の招待を受けてドンバスその他の地域に赴いた・・」と記されていて、ちょっと引いてしまった。これも欧米側の怪しげな情報と変わらない「大本営発表!」みたいなものだろうと思ったのである。
このロシア国防省の主催による現地取材ツアーには、フランス、ドイツ、インド、アラブ諸国等々の記者も参加していたそうだが、トルコからはペリンチェク氏以外に参加者がいなかったらしい。
「大本営発表!」という先入観もあったうえ、記事が見聞の詳細にまで至る非常に長いものであったため、とても読み通す気にはなれず、所々拾い読みしただけで、連載の続きには殆ど目を通すこともなかった。また、それほどの暇もなかったのである。
拾い読みした9日の記事には、マリウポリ現地の見聞として、アゾフスタリ製鉄所に立て籠もっているウクライナ軍兵士らの兵糧等は僅かしか残っておらず、「遅くとも2週間以内に投降する」と伝えられていた。
しかし、9日の時点で、私はこの「大本営発表!」も半信半疑で読み流していたけれど、今日の報道によれば、アゾフスタリ製鉄所から兵士らの投降が始まった事実をウクライナ側も認めたそうである。
日本の各紙の中には、「兵士らが退避」とか「任務の終了」などといった不明瞭な記述も見られるものの、ロシア軍のウクライナ侵攻における最も重要な目標の一つであるマリウポリが陥落したのは、もはや隠しようもない事実だろう。
欧米側の報道による「ロシア軍がアゾフスタリ製鉄所で化学兵器を使用」というのも、兵士らが生きて投降したというのだから、おそらく事実に反していたのではないかと思う。こちらの「大本営発表!」は話半分どころか真っ赤な嘘だった可能性もある。
今思えば、ロシア国防省が海外の取材陣を招待したのは、それなりの自信に基づいていたのかもしれない。
9日の「ドンバス日記」には、アゾフスタリ製鉄所に400人近い西欧の軍人が立て籠もっているという情報も明らかにされていた。
もっとも、現地の親ロシア派指導者は、この情報が未確定であるとして、「アゾフスタリが解放されれば解るだろう」と語ったそうである。そのためにも、ロシア軍は彼らを生きたまま確保する必要があり、慎重に事を進めていたらしい・・・。
さて、今後、どのような事実が明らかにされるのだろうか?