メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ベトナムの人たちの街

80年代の後半、あの頃も日本には海外からたくさんの人たちが働きに来ていた。

当時、日本は経済大国と持て囃され、好景気に沸いていたから、労働条件は厳しくても、彼らが日本で働くメリットは大きかったのだろう。

89年、韓国の会社の東京の支店で働いていた私は、友人たちと何度か小岩辺りに出かけて東南アジア各国の料理を楽しんだりした。

JRの小岩駅で降りると、『ここはいったい何処の国だろう?』と思えるくらい外国の人たちが多かった。

駅の周辺には、タイ料理、ベトナム料理、フィリピン料理等々の看板を掲げる店がひしめいていたけれど、その多くが自国の人たちを対象にしていて、中には日本語のメニューを用意していない所もあった。

そのため、本場の料理だけでなく、各国の雰囲気も楽しむことが出来たので、「さて、今日の東南アジアツアーは何処にしよう?」なんて喜んでいた。

おそらく私は、「タイのトムヤムクン」も「ベトナムの生春巻き」も、あの「東南アジアツアー」で初めて味わったのではないかと思う。

東南アジア各国の料理は、いずれも甲乙付け難いくらい美味しい。そもそも、どの国も気候の条件が良くて豊富な食材に恵まれているから、料理が美味いのは当たり前なのかもしれない。

今では、トムヤムクンも生春巻きもポピュラーな味覚として日本の社会に受け入れられているようだ。

この30年で私たちの味覚はとても豊かになった。中華料理も、四川であるとか広東であるとか、その地域にまで拘るようになった。韓国料理などは、本場韓国での流行が直ぐに伝わって来る。有難い時代になったものである。

先週は、友人と大坂でベトナム料理を楽しんだ。生春巻きと豚肉の煮物が実に美味しかった。毎日、ベトナム料理店に通いたくなってしまうほどだった。

それで、一昨日、神戸の近辺でベトナム料理店を探してみたみたところ、長田にベトナムの人たちが多く住んでいて、料理店も数か所あることが解った。

そして、今日、夜勤が明けると、早速、長田まで行ってきた。一応、「PHO KOHA フォーコハ」という店を目標にしてみたけれど、そこへ行きつくまで、同じ商店街の中に3軒も他のベトナム料理店が現れた。確かにここはベトナムの人たちの街になっているらしい。

今日は、夜勤明けの朝食兼昼食だったので、軽く「牛肉のフォー」を食べてみたけれど、あの街は夕方になってから何度でも探索に来なければならないように思われた。もっとも、そういう時間的、経済的な余裕があればの話だが・・・。

しかし、周囲の商店街の寂れた雰囲気が悲しかった。行き交う人もお年寄りばかりで、若い人たちが本当に少ない。あれでは、ベトナムの人たちも元気が出ないのではないか。

思えば、89年の小岩駅の周辺は活気に溢れていた。そのためか、海外から働きに来ている人たちの目も輝いているように見えた。

あの人たちの殆どは、一定の貯蓄を得た後、故国へ帰ってしまっただろう。当時、彼らが日本に定着できるようにしていれば、その子供や孫たちで街は賑わっていたかもしれない。今になって考えてみたところで仕方がないけれど・・・。

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