敗戦によって朝鮮半島から叩き出された日本の状況は、もちろんロシアと大きく異なっていただろう。
とはいえ、日本が朝鮮を「植民地」と認識して統治したのは、議論の余地すらない事実と思われる。
議論になっているのは、その「植民統治」の質であるようだ。
一部の人たちは、それが英国のインド統治に比べて遥かに良かったと主張している。
しかし、古来より隣国として様々な交流を持ってきた日本と朝鮮には、「英国とインド」とは比較にならない深い歴史的な繋がりがあったのではないか。それは、英国とフランスの関係に擬えてみても良いかもしれない。
このように考えたら、日本の朝鮮統治は、隣国に対して余りにも酷い仕打ちだったと言わざるを得ない。
戦後、日本は朝鮮半島ばかりでなく大陸からも叩き出され、以来、東洋の国であるという自覚さえ薄れてしまったかのようである。
西洋の真ん中に位置しているため、周囲との関係に腐心しなければならなかったドイツとは、この辺りが大きく異なっている。
それでも日本が、戦後、平和を維持して繁栄を成し遂げた背景に、米国の存在と冷戦の構造があったのは言うまでもない。
その米国が、今後も東洋に存在を誇示し続ける保証は何処にもない。それどころか、最近、米国は駐留軍の撤収を仄めかしていたりする。
実際、中東のシリアからは大幅に撤退してしまったし、今度はアフガニスタンからも撤退を表明している。
こういった情勢の中、日本は、いよいよ東洋の一国としてやって行く姿勢を、より鮮明にしなければならなくなりそうだ。
「日本の植民統治は英国と比べて良かった」などと戯言を繰り返している場合じゃないと思う。