メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

祖国とは腹が満たされる所である

トルコ語に以下のような諺がある。

「İnsanın vatanı doğduğu yer değil, doyduğu yerdir.(人にとって祖国とは、生まれた所ではない、腹が満たされる所である)」

「doyduğu(ドイドゥー:腹が満たされる)」になっているのは、「doğduğu(ドードゥー:生まれた)」と語呂を合わせるためだろうから、「生きていける所」といった意味に考えても良いのではないかと思う。

こんな諺があるくらいだから、トルコの人たちは、生まれたトルコで生活が厳しくなれば、外国へ移民するのも躊躇ったりしない。

トルコに限らず、戦乱が続いたり他国の侵略を受けたりした大陸の国々では、やはり簡単に移民してしまう人たちが少なくないように思える。

国籍への拘りも余りなさそうだ。昨年は、トルコ在住の韓国人の友人が国籍を取得してトルコ国民になってしまったことに驚かされた。

国家が、いくら愛国思想を喧伝しても、人々は柔軟に対応してしまう。愛国思想より何より、まずは生きて行かなければならない。背に腹は代えられないのである。

生きて行くために、働いて生活費を得る。そこに働く所が無かったら、何処へでも行く。職を得て生活が成り立てば、そこが「祖国」になるのだと思う。

私はトルコを「第二の祖国」と思っているけれど、この伝に従うなら「祖国」とは言えないだろう。生活が成り立たなくなって日本へ帰って来たからだ。