メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

50歳と14歳の関係/トルコの「児童性的虐待防止法」

今、日本で「50歳と14歳の性行為の是非」が話題になっているけれど、トルコでは5年前に「児童性的虐待防止法」が発令され、その適用上の問題が議論されていた。

この法律は15歳以下の女子との性行為を一切認めないため、14歳の女子と駆け落ちした17歳の男子も罪に問われて服役を余儀なくされるという事態も生じてしまった。

発覚したのは女子が出産した際に年齢が明らかになったからだという。

つまり、服役中の男子には既に子供がいたわけで、これでは残された妻子も困るだろうと、今度はそういったカップルを救済するための法案が提出されて、議論は盛り上がったようだ。

ミュエッズィンオウル労働社会保障相(当時)も、「40代、60代の男性と14歳の女子の間に、親密な情があったとは考えられない」として、救済の対象から除外されるべきだと発言したりして、与党内からも反発の声が高まり、その救済法案は撤回されてしまったけれど、そもそも「児童性的虐待防止法」は東部の農村地帯に残る「早婚」の風習を根絶させるためのものだった。

だから、如何に自由な意志があったとしても、17歳と14歳の早婚を許すわけには行かなかったらしい。

もっとも、早婚の風習が問題になっていたのは、14~5歳の娘を年齢のかけ離れた男に嫁がせてしまう例が多かったためだという。

アブドゥルラー・ギュル前大統領は、30歳の時に15歳のハイリュンニサ夫人と結婚しているため、これを揶揄する声が絶えなかったけれど、当時もこの「児童性的虐待防止法」があったならば、逮捕されてしまうところだった。

しかし、真の「結婚」であれば、まだかなり良かったらしい。30年ぐらい前、部族社会が残っていた東部では、部族長が村の娘たちに片っ端から手をつけていたなんてこともあったという。

1992~3年頃に観たトルコのニュース番組では、女性のレポーターが東部の村を取材して、50~60歳ぐらいの部族長に村の広場で遊ぶ幼い子供たちを示しながら、「あの子たちも貴方の子供なんですか?」と尋ね、部族長が「多分そうだろ」と事も無げ答える場面があった。

その頃、イズミルで知り合った30歳ぐらいのクルド人男性は、「私の父親は部族長で、母親は手を付けられた娘たちの1人に過ぎなかったため、父親は私の存在さえ知らなかったと思う」と打ち明けてくれた。

彼は6歳の時に、成人していた兄がイズミルへ連れてきてくれたお陰で学校にも入れたそうだ。そのまま村に取り残されていたら、学校にも行けず、トルコ語を学ぶことも出来なかったと述懐していた。

これは正しく根絶させなければならない悪習に違いないが、日本で話題になっている「50歳と14歳の性行為の是非」はどうだろう?

普通に考えれば、トルコのミュエッズィンオウル労働社会保障相が述べたように、「親密な情があったとは考えられない」ということになるはずだ。

しかし、世の中には「普通」の範疇に入らない事象がいくらでもあるから、一概に決めつけてしまうわけには行かないかもしれない。

私は「親密な情」というより、対等な関係であるかどうか問題ではないかと思う。そして、対等な関係のためには、年齢云々ではなく、相互の敬意が重要ではないだろうか? 

相互の敬意が無ければ、同じ年齢でも真っ当な関係とは言えないような気がする。これは単なる友人関係でも同様だろう。

例えば、50歳の男が14歳の女子を尊敬することはあるかもしれない。幼い頃から鍛錬を重ねてきたアスリートの中には、その年齢で既にもの凄い精神世界を築いている例がいくらでも見られるからだ。

しかし、この場合、14歳の女子が50歳の男に敬意を示すことは、まずないように思える。

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