メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

世界の歴史は大きな変化を迎えるのだろうか?

90年代の初め頃だったと思う。ロッテの創業者である辛格浩重光武雄)氏がインタビューに答えた記事を雑誌か何かで読んだ。

当時の韓国には、様々な面でもの凄い勢いが感じられたため、「あと10年~20年もすれば日韓の立場は逆転してしまうのではないか?」という声が日韓の双方から聞かれたりした。

ところが、辛格浩氏は「私が生きている間に韓国が日本に追いつくことはない」と語り、それを否定していた。当時、70歳の氏は自分の寿命を90年と想定して『この20年の間に・・・』という意味で語っていたのだろうか?

しかし、98歳と異例の長寿を全うした辛格浩氏が亡くなったのは昨年のことであり、既に韓国は「一人当たりのGDP」で日本に追いつこうとしていた。計算の仕方もあるようだけれど、現在では、日本が韓国に追い越されてしまったらしい。辛格浩氏はこの変化をどう見ていただろう?

歴史に訪れる大きな変化、私たちの世代ならば、まずは1991年のソビエト崩壊を思い出す。

その10年前、21歳だった私はソビエトという国家がなくなってしまうなんて夢にも思っていなかった。果たして、これから10~20年の間には、どういう大きな変化が待ち構えているのか?

そういった未来予測として、「中国がGDPで米国を抜き去り、経済的に世界最大の国家になる」というのがあるけれど、これは既に「驚くべき変化」とは言えなくなっているような気がする。

「米国の覇権は失墜し、世界の覇権国は中国になる」というのもあるが、これはどうだろうか?

軍事力や科学技術力の面では、まだまだ米国が優位であると説く人も多い。そもそも、中国自身が世界の覇権国となる未来を描いているのかどうか未だ何とも言えないらしい。

しかし、米国が徐々に覇権を縮小させて行くのではないかという予測を唱える人は少なくないようだ。トルコの識者の中にも、そういう主張は見られる。世界は多極化して行くというのである。

そのためか、トルコ国内の米軍基地を閉鎖すべきといった議論も盛んになっているけれど、トルコ国内の米軍基地には核弾頭も配備されているそうで、なかなか簡単には行かないらしい。

トルコで反米が強くなって来ているのは確かであるものの、米国との関係が非常に重要であるという事実は変わっていない。NATO離脱も未だ現実的な議論とは言い難いように思える。

トルコ政府は、ギュレン教団PKKといったテロ組織に対する支援を止めるよう米国と粘り強く交渉を続けて行くし、同様にロシア・中国とも交渉する。これはトルコが米国と疎遠になるとか、親ロシア、あるいは親中国になることを意味していないだろう。

しかし、個人的には『私が生きている間に米国の覇権は失墜するかもしれない』なんて考えたりすると非常に興奮が高まって来る。『ついに、あの悪魔の帝国が・・・』などと期待してしまうのである。