メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「人々を『生きる屍』に、社会を『禁止の地獄』に変えてしまってはならない!」(トルコのジャーナリスト)

トルコでコロナによる死者数の累計は2万9千に達したそうである。

政府は、最近になってようやく「普通の生活に戻そう!」と呼び掛け始めたらしいが、元医師のコジャ保健相が相変わらず危機的な状況を訴えたりして足並みがそろっていないようだ。

コジャ保健相に限らず、多くの医学専門家からも危機感を煽る発言が相次いでいるという。やっと営業を再開した飲食店に押し掛ける自警団のような人たちもいるらしい。

エルドアン大統領もこの騒ぎの中で余りイニシアティブが取れていない。記者の質問を「我が国には学者会という機構がありますから・・」とかわしたりして、錯綜する情報に戸惑っているように見える。医学的な専門知識があるわけじゃないので致し方ないかもしれないが・・・。

しかし、テロ組織に対する軍事行動は続けられていて、先日も軍用機の墜落等により、将官を含む多くの殉死者が出ている。

そのため、3月6日付けのサバー紙のコラムで、79歳になるジャーナリストの重鎮、メフメット・バルラス氏は殉死者を追悼していたが、それに続けて「コロナのパニック」についても言及している。以下にその後半の部分だけを拙訳してみた。

バルラス氏については、この「アタテュルクに対する個人崇拝」という駄文を参照して頂きたい。

**********(以下3月6日付けサバー紙より拙訳)

(前略)・・・ここで1年以上にわたり、コロナ感染症のため、私たちばかりか世界も巻き込まれたパニックをもう一度検証してみよう。

この感染症により多くの命が奪われた。世界の死者総数は250万を超えている。しかし、自然な要因や老衰による死者数も考えた場合、状況は世界各国で「自宅軟禁」や様々な禁止が必要になるレベルではない。

毎年、癌や心臓疾患、あるいはインフルエンザのようなウイルス性の疾患で亡くなった人の数はコロナの犠牲者よりも多いのである。

この事実を踏まえて検証し、人々を「生きる屍」に、社会を「禁止の地獄」に変えてしまってはならない。子供たちは学校へ、働く人たちは仕事へ、そして、友人たちとの集いを続けるべきである。殉死に悲しみながら、死とこの状況を考えずにはいられない。

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サバー紙は政権寄りの新聞であり、バルラス氏はエルドアン大統領に近い人物として知られている。

おそらく、この記事をエルドアン大統領も読んでいるだろう。あるいは、バルラス氏との間に直接のやり取りがあったかもしれない。

バルラス氏は昨年の7月にも政府のコロナ対策を批判していた。これは以下の「日本の同調圧力自画自賛」という駄文で取り上げている。

私もトルコの社会が逸早く「普通の生活」に戻れるよう祈っている。

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