メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「選挙に基づく民主主義の制度」は今後も有効なのか?

米国の騒動は、「選挙に不正があった」という主張から始まったようだ。

「既に亡くなっている人の“票”が使われていた」等々、様々な説が飛び交っていたけれど、いずれも真偽のほどは定かではない。

但し、多くのメディアが選挙前からトランプ氏に否定的な報道を繰り返していた所を見ると、「既存の体制はトランプ氏の再選を望んでいなかった」というのは事実であるかもしれない。

トルコでは、政府寄りの識者の多くが「常軌を逸した言動」に疑問符を付けながらも、トランプ氏の再選を願っていた。

トルコはトランプ政権から容認を得て「平和の泉作戦」を始めとするシリアへの軍事介入を敢行し、自国の南東部の安定を大幅に前進させることができたからだ。

一方、日本でも、トランプ政権がロシアと協調して中国を包囲するのであれば「勝算有り」と見ていた人は少なくなかったように思う。私もそういった主張に説得力を感じていた。

ところが、バイデン新政権には再びロシアを敵視する傾向が見られるらしい。これはロシアを中国側に押し付けてしまうのではないか、日本に限らずトルコにもそのように論じる識者がいる。

そのためか、選挙前は「コロナによる中国叩き」に加わっていたようにも見えたトルコ政府は、選挙後、中国製ワクチンの導入を決定したり、「一帯一路」を提唱したりして微妙に態度を変えて来ている。

もっとも、米国の存在は無視できないから、バイデン新政権への対応も早い段階で準備し始めたのではないだろうか? 

仮に、大規模な不正があったとしたら、それは「何としてもトランプ氏の再選を認めない既存の体制の強い意志」と解釈することも可能であるかもしれない。その意志に逆らうのは、もっと恐ろしいことになりそうだ。

しかし、コロナ騒ぎへの対応を見る限り、選挙を心配しなくても済む中国とロシアは非常に有利であるような気がする。

「文明の十字路」に位置するトルコが米国・ロシア・中国のパワーバランスを常に意識して来たように、日本も今後は米中両大国の狭間で一層苦慮しなければならなくなってしまいそうである。

「米国は中国に対する最後の勝機を既に逃してしまった」と言う人もいるけれど、あながち間違ってはいない可能性もある。

何より「選挙に基づく民主主義の制度」に対する疑問は、今回の一件でさらに深まってしまったと思う。