メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの強面の恐妻家?

《2011年2月3日付けの記事を改正》

クズルック村の工場で、技術部のグループ長を務めていたオメルという青年は「強面の恐妻家」と言えたかもしれない。

オメルさんは高卒の叩き上げで、情熱的な仕事ぶりが、日本人の出向者からも厚く信頼されていたけれど、ちょっと激しやすいところがあって、なかなかの強面だった。

奥さんのナギハンさんも、製造部の有能なグループ長であり、彼女のほうが少し早く昇進したため、オメルさんは大分発奮したようだ。

ナギハンさん、2002年当時で、25~6歳ぐらいじゃなかったかと思うけれど、可憐な雰囲気の女性で、実年齢よりずっと若く見えた。そのため、口の悪い出向者の方々は、オメルさんと比べて「あれじゃあ『美女と野獣』のカップルだ」なんて揶揄していた。

実際のところは、オメルさん、トルコ人男性の基準からしても相当なイケメンと言えただろう。しかし、激昂して、大きく目を見開き、鼻孔を膨らませた時の形相は、確かに「野獣」のように見えたかもしれない。

いつだったか、会議室で、製造部の面々と折衝中に激昂し、その形相で椅子から身を乗り出すようにして大声を張り上げ、手がつけられない状態になると、製造部チーフのマサルさんは、そっと席を立ち、内線を使って何処かに電話していたけれど、暫くしたら、会議室にナギハンさんが入って来た。

この時のオメルさんの反応は実に見物だった。奥さんの姿が視界に入るや否や、まずは居住まいを正し、柔和な表情になって静かに話し始めたのである。

会議が終った後、マサルさんは何やら嬉しそうに、「オメルを大人しくさせるためには、彼女を呼ぶのが一番だね」と手の内を明かしてくれた。

オメルさん、会議中、隣に奥さんが座っているの忘れて、大声を張り上げたこともある。あの時は、奥さんの反応が凄かった。冷たい視線で亭主を睨みながら、静かな声に力を込めて、「あんた、何で怒鳴るの?!」と問いかけ、たちまち制圧してしまったのである。

オメルさんの部下の男も、「うちの大将に、何か提案する時は、ナギハンさんに頼むと巧く行くね」なんて話していた。

しかし、私のような腰抜け男が言うのも何だけれど、外では強面を通しながら、奥さんに頭が上がらないというのは、まさに「男の中の男」であると思う。

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