メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

マルカル・エサヤン氏の訃報

アルメニアアゼルバイジャンの紛争が報道されて以来、私は、アルメニア人のマルカル・エサヤン氏がこの問題に対して、どのような意見を述べるのか気になっていた。

トルコの政権党AKPの議員であるエサヤン氏は、アクシャム紙に週2回コラム記事を書いていたけれど、これが9月26日の「東地中海の問題」に関する記事を最後に更新されていなかったため、『何故だろう?』と余計に気になっていた。

その理由が、今日の未明、明らかになってしまった。トルコのジャーナリストがTwitterでエサヤン氏の訃報を伝えていたのである。エサヤン氏は、癌で一年半に亘って闘病生活を続けていたという。

私はエサヤン氏のコラムに時々目を通しながら、その病状については全く知らなかったので、訃報に驚き、愕然としている。まだ51歳の若さだった。

その後、エサヤン氏に関する記事をいくつか読んでから、以下のYouTubeで、2013年11月のインタビュー番組を観た。


İkiz Aynası - Konuk: Markar Esayan

エサヤン氏の母親はイスラム教徒のチェルケズ人だったそうである。私はこれも知らなかった。

父方の祖父は、オスマン帝国末期に迫害を受けたキリスト教徒のアルメニア人、母方はロシア帝国の迫害からオスマン帝国へ逃れて来たチェルケズ人であるとエサヤン氏はインタビューの中で語っている。

アルメニア人のコミュニティーで父親が難しい立場に置かれると、チェルケズ人の母親は「私がキリスト教に改宗しても良い」と言ったそうだが、父親はそれを断ったという話も出て来る。

こういった複雑な家族の歴史が、エサヤン氏の重層的なものの見方に影響を与えていたように思われてならない。