メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

コロナ報道の怪

このところ、コロナは危惧されたような死亡者の増加を見せていないものの、過激な報道だけは執拗に続けられている。まるでコロナの恐怖を意図的に煽っているような印象さえある。重々しい口調で「〇〇人の感染者が新たに確認されました」と報じながら、その感染者の症状がどのようなものであるかは明らかにしようとしない。河野太郎氏が毎日のように更新しているツイッターの詳細な報告によれば、その多くは軽症のようである。

私はこういったコロナの報道を見ていると、数年前の「イスラム国(IS)」に対する報道を思い出してしまう。トルコでYouTubeから日本のテレビ報道を観ながら、「せめて『自称イスラム国』とは言えないものか」と一人で苛立っていた。新聞にはその背景を詳細に解き明かした論説などが掲載されていたけれど、残念ながら、多くの人たちは、それほど日常に影響を及ぼさない中東関連の記事を隅々まで読んだりしない。そのため、テレビで報じられるショッキングな映像と何度も繰り返される「イスラム国」という呼称だけが印象に焼き付いてしまったのではないかと思う。仮に、イスラムに対するネガティブなプロパガンダを企図するなら、これだけで充分だろう。トランプ大統領候補のイスラム排斥発言に賛同して票を投じた人たちの多くは、やはりイスラムに関して「イスラム国」と「斬首」の印象ぐらいしか持っていなかったに違いない。

トルコでは、2013年6月の「ゲズィ公園騒動」の報道においても、そういったプロパガンダ的な印象操作を感じてしまった。おそらく、米国のメディアがもの凄い勢いで「情報」を流していたのだろう。日本のありとあらゆるメディアがイスタンブールに集結したお陰で、私にまで通訳・アテンドの仕事が回って来た。

あの一件以来、米国は、世界におけるお金や石油の流れを牛耳っているばかりではなく、「情報」の流れも押さえているのではないかと考えたりした。もちろん、米国は報道の自由をあからさまに制限したりはしない。大量の「情報」を流し続ければ、それが主流になってしまうだけではないかと思う。

今回のコロナ報道にもそういった意図的な印象操作があるとすれば、その標的になっているのは中国ということになりそうだ。中国は以前から米国の仕掛ける「情報戦」に対応するため、フェイスブック等のSNSを禁止してきたらしいが、今回も含めて打つ手の全てが裏目に出てしまったような気がする。