メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

コロナ後の世界/「万人は万人に対して狼」

コロナ騒ぎが収まった後、世界はどうなるのだろう? 日本には、各国が協力し合う麗しい世界の実現を期待する人たちもいる。これはトルコでも同様らしい。

しかし、サバー紙のメフメット・バルラス氏は、そういった期待に対して、「『人間は人間の狼だ』という現実は変わらない」と反論していた。調べてみたところ、「人間は人間の狼だ」は、ホッブスという17世紀の英国の哲学者の言葉であるという。日本では「万人は万人に対して狼」という訳が一般的であるようだ。

トルコ政府は、コロナ騒ぎの中、イスラエルにマスクを始めとする医療品を送って注目されていたけれど、これは「敵に塩を送った」わけじゃなくて、厄介そうな狼との関係修復を狙っただけかもしれない。

そういう外交が何処まで功を奏するのか解らないものの、米中対立が激化すれば、トルコも米国寄りの姿勢を明確にして行くような気がする。中国は、コロナ騒ぎにより、国際社会の中で非常に難しい立場へ追い込まれてしまったのではないだろうか?

日本人の多くが、コロナウイルスに対する免疫を前以て獲得していたのか、BCGの接種が効果的であったのか、その要因は明らかになっていないが、日本でコロナの被害はそれほど拡大する気配を見せていない。それでも、「緊急事態宣言」で世相が厳しさを増す中、中国共産党政府に対する反感は、修復し難いほど高まっている。

中共政府は、事態の収束をアピールしたり、「米国がコロナを持ち込んだ」などと非難したりして、イメージの回復に躍起になっているけれど、いずれも裏目に出ているような気がしてならない。特に、「米国がコロナを持ち込んだ」という発言には唖然としてしまった。そこまで言うためには、確固たる証拠を突き付ける必要があったはずだ。

トルコにおける「2016年7月のクーデター事件」は、米国の支援を受けているギュレン教団の策謀であることが、ほぼ明らかになっているものの、米国の関与を立証するのは難しいため、国内世論では大きく取り上げられていても、トルコ政府はこれについて何も発言していない。米国に対しては教団関係者の送還だけを言い続けている。

何故、中国政府はこういった理性を見せることができなかったのだろう? トルコとは比べ物にならない大国となったため、驕りが生じてしまったのだろうか? このままでは、中国は四方八方から狼の群れに包囲される大きな熊のようになってしまうかもしれない。