メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの料理にゲテモノは少ない!

1991年にトルコへ初めて渡航する前、テレビの海外取材番組で一風変わったトルコの食文化が紹介されていた。来客のために羊の頭を焼き、まずは最も貴重な目玉をくりぬいて客人の皿に供するというのである。ゲテモノ好きの私は好奇心をそそられて、「トルコへ行ったら、是非これを食べてみなければ・・・」と思いながら画面を注視していた。

ところが、トルコへ渡り1年ほど滞在したイズミルの街でそういった料理を目にする機会は全くなかった。トルコ語学校の先生に訊いても、「そんな料理は私も見たことがありません」と気持ち悪そうに顔をしかめた。

私がイスタンブールのレストランで「羊の頭」を食べたのは、多分、その10年ぐらい後のことだった。それもテレビの番組で紹介されていたように、皿の上に「羊の頭」をドンとおくエキサイティングなものではなかった。「頬肉」や「脳みそ」、「舌」に「目」といった食べられる部位がきれいに切り分けられて出て来たのである。

「まず目玉をくりぬいて客人の皿に供する」という話は、結局、都合20年トルコで暮らしながら一度も耳にしなかった。あの番組には「やらせ」の要素もあったのだろうか?

そもそも、トルコの食文化に取材した他の番組を見ても、面白おかしくゲテモノ的なB級グルメばかり紹介している例が多くて、うんざりしてしまう。多少、まともな料理が出て来たとしても、肉のケバブなどが殆どである。とにかく「中東」のイメージで見せようとしているのかもしれない。欧米の視点でトルコ自体がゲテモノ扱いされているような気もする。

実のところ、トルコの料理にはがっかりするほどゲテモノや珍味の類が少ない。トルコ料理の特徴は、様々な野菜に肉や魚、そしてオリーブ油を使った冷菜や煮込みにあるのではないかと思う。

特にナスを使った料理が多彩で美味しい。裏ごししたナスをぺシャメルソースのようなものと合わせ、煮込んだ肉を載せた「ヒュンキャルベエンディ(王様のお気に入り)」などがその神髄と言えるのではないだろうか?

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ヒュンキャルベエンディ