メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

翔ぶが如く

昨年、正月に鹿児島へ行くことが決まってから、司馬遼太郎の「翔ぶが如く」を読み始めたけれど、まだ4巻目を読み終えていない。良く解っていない歴史的な事件や人名が出て来る度に、ネットで検索したりしているので、なかなか進まないのである。
さて、これは作者の意図に反しているような気もするが、これまでに現れた人物の中では、伊藤博文に最も魅力的な雰囲気を感じている。現実的であまり重苦しくないところは現代でも通用するのではないかと思う。
もちろん、作中の西郷隆盛にも魅力は感じている。というか、西郷隆盛には子供の頃から漠然とした愛着があった。子供向けの偉人伝で読んだ影響であるとか、上野の山の銅像に親しんでいたためであるかもしれない。
鹿児島では、そのゆかりの地もいくつか見て来た。生誕の地である加治屋町は、宿泊したホテルから歩いて5分ぐらいの所である。この加治屋町では、大久保利通大山巌東郷平八郎山本権兵衛といった維新・明治の英傑らも生まれ育っていて、各々の生地は僅か1km四方の範囲に収まってしまうほどの近さだった。「翔ぶが如く」でもこの点が強調されている。
しかし、その狭い町内に、生まれつき優れた資質を持った人たちが次々に現れたというのは、どう考えても不自然だから、それは当時、薩摩武士の間で行われていた「郷中」という厳しい教育法の賜物ではなかったかと思う。
例えば、今でも鹿児島にはラサール高校という有数の進学校がある。この学校も文武両道に基づく心身の鍛錬で知られている。ネットで検索してみると、卒業生の欄に政財界などで活躍中の錚々たる顔ぶれが並んでいた。
ラサール高校は全国から生徒を集めているため、加治屋町の例とは少し異なるかもしれないが、やはり僅かな敷地の中に英才がひしめき合っているのである。ひょっとすると、そこには薩摩の「郷中」の伝統が活かされているのではないだろうか? なんて考えて見たら面白いのではないかと思った。

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甲突川の対岸に見える加治屋町

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西郷隆盛生誕の地

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ラサール高校