メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの人々を悩ませてきたのは・・・・

「メルハバ通信」の記事を書き始めた18年前、トルコでは政教分離世俗主義イスラム主義の対立が問題になっていた。日本でも、トルコのイスラム主義勢力が台頭して、イランのような「イスラム革命」が起きるのではないかと論じられたりしていた。

 私は、イスラム信仰の篤い人が多いクズルック村の工場で働きながら、『世俗主義が覆されるようなイスラム化など起こるわけがない』と楽観していたけれど、その後、双方の過激な論説を読んで、訳も分からず不安を募らせたりした。

 今思えば、難しいことを考えずに楽観したままでも良かったのである。トルコは、信心深い人たちも、信仰のない人たちも当たり前に暮らせる世俗的な社会になっていたのだと思う。

 しかし、もっと楽観していた「クルドの問題」は、この18年の間に、国営放送のクルド語チャンネルやクルド語の教育等々が実現したにもかかわらず、今でも不安な状態が続いている。

 シリアのクルド勢力YPGは相変わらず米国の庇護下に置かれているという。こうして不安な状態が続いてしまうのは、「クルドの問題」が欧米の妨害により、トルコの努力だけでは解決できない「問題」になっているからだろう。

 そもそも、オスマン帝国の末期に欧米の介入がなければ、「クルドの問題」など生じていなかったと論じる人たちもいる。実のところ、オスマン帝国以来トルコの人々を悩ませて来たのは、「クルドの問題」でも「イスラムの問題」でもなく、「欧米との関係」という問題だったのかもしれない。