メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ソウルの中国大使館

8月に訪れたソウルで、改築された中華人民共和国大使館の豪勢な佇まいに驚いた。大使館は、ソウルきっての繁華街ミョンドン(明洞)のど真ん中に位置している。私がソウルに留学していた頃は、中華民国(台湾)の大使館だった。
実を言うと、私は改築後の豪勢な佇まいに驚くまで、そこには従来通り中華民国(台湾)の大使館があると思い込んでいた。
2013年の4月に、在韓華人の友人兄弟らとミョンドンを歩いた時は、まだ工事中だったので、気にも留めずに通り過ぎていたのだろう。隣の中華学校を見ると、昔と同じ繁体字の表札が掲げられていたから、何ら変化を感じていなかったのかもしれない。
改築された中華人民共和国の大使館には、もちろん簡体字の表札が掲げられていた。その晩会った華人の兄弟、明仁と明岩に訊いたら、92年、韓国と中華人民共和国の国交が正常化すると同時に、民国大使館の建物も土地も全て中華人民共和国へ引き渡されてしまったそうだ。彼らは説明しながら、酷い話だと笑っていた。
私はその会話の中で、彼らが未だ中華民国(台湾)の国籍を維持していることも知った。てっきり中華人民共和国の国籍になっていると思っていたのだ。彼らは私の誤解に目を丸くして呆れていた。
けれども、韓国の華人は殆ど満州山東省から渡って来た人たちで、在日華人の多くのように台湾と深い縁があるわけではない。彼らの兄である亡くなった友人から大陸への憧憬を聞いた記憶もある。
明仁と明岩は、両人とも中華人民共和国に対して良いイメージを持っていないようだった。韓国の中華人民共和国への接近にも警戒感を露にしていた。特に台湾で21年間暮らしてきた明岩にとって、中国は非常に恐ろしい存在であるらしい。
私も、民国大使館が中華人民共和国のものになってしまったのは酷い話だと彼らに同意しながら、憤懣やる方なかったけれど、トルコへ戻ってから調べてみたら、日中国交正常化でも状況は全く同じだったそうである。以下のブログにその詳細が記されている。

  確かに、彼らほどではないにせよ、現在の中華人民共和国に良いイメージを持つのは難しいと思う。あの体制が続く限り、民主化など殆ど期待できそうもない。
しかし、最近、オスマン帝国以来のトルコの歴史について読みながら思ったけれど、例えば中国が思い切った民主化を始めたら、欧米はこれを称賛して中国に惜しみない支援の手を差し伸べるだろうか。それどころか、「待ってました」とばかり、中国をあちこちから食い物にして行くような気がする。
また、トルコは、民主化と和平プロセスによって、クルド民族主義を掲げる知識人らはともかく、一般クルド人民衆との絆をさらに深めて行けると思うが、中国で、ウイグルチベットの人たちは民主化によって何を主張しようとするだろう。その前に、漢族の人たちがそれぞれ異なる道を歩み始めてしまうのではないか。
でも、考えようによっては、国家とか国境とか、それこそ中国の人たちにとっては余り意味のないものかもしれない。少なくとも、在韓華人の友人兄弟と話していると、彼らがそういう括りを殆ど意識していないことが解る。
良く言われる話だけれど、欧米が中国を支配しようとすれば、それはただ巨大な香港を作り出すだけになる。そこから人々がアメリカへどんどん移民すれば、そのうちアメリカは巨大なシンガポールになってしまう・・・。想像するだけでも楽しい未来が開けて来そうだ。

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