メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

風と共に去りぬ

半年ほど前、映画「風と共に去りぬ」を“YouTube”で購入して観た。全編通して観たのは、多分、三度目ぐらいだったのではないかと思うけれど、観るたびに感動を新たにしている。
この映画には、南部の奴隷制度を肯定的に描いているといった批判もあるようだが、そもそもヒロインである“スカーレット・オハラ”の生き様からして、他の映画の善良なヒロインとは全く異なっている。
彼女は、劇中、3回結婚しているものの、相手を経済的に利用するために結婚したりして、純粋な恋愛感情によるものは一度もない。最後に、3度目の夫“レット・バトラー”と別れる間際になって、彼を愛するようになるが、当初は、バトラーとも打算から結婚したのである。
そのバトラーは、スカーレットに対して、「おれたちは良く似ている。利己的だが自分を主張する強さも持っている」と語りかけていた。
そして、スカーレット自身、映画前編の最後、南軍が敗れて全てを失った時点で、以下のように叫ぶのである。
「神よ、お聞きください、この試練に私は負けません、家族に二度とひもじい思いはさせません、生き抜いて見せます! たとえ盗みをし、人を殺してでも! 神よ、誓います、二度と飢えに泣きません!」(映画の日本語字幕より)
実際、その後、スカーレットは僅かに残った金品を北軍の兵士に奪われそうになると、一撃のもとにその兵士を撃ち殺している。
それにも拘わらず、映画全編を通して、スカーレット・オハラはあくまでも強く美しい。アメリカでも、強く美しい女性の理想像として、スカーレット・オハラの名が挙げられているそうだ。
アメリカは、中国やインドのように、もとより豊穣な大地の上に文明を築いたわけではない。寒くて陰気な貧しい島国に過ぎなかったイギリスで食い詰めた人々が、命懸けで大西洋を渡って辿り着いた新大陸で、原住民を殺戮しながら、必死になって開拓した成果がアメリカだったのである。
だから、前述のスカーレットの言葉は、まさしくアメリカの叫びと言って良いのかもしれない。そして、アメリカは、今でもこの厳しさを失っていないような気がする。
その膨大な富を少しでも失いそうになると、それこそ命懸けで、如何なる汚い手段も躊躇わずに攻撃してくる。一歩たりとも退こうとはしない。かつて、日本はこんな恐ろしい相手に挑みかかって酷い目に合わされてしまった。
しかし、映画のスカーレット・オハラと同様、こうして必死になって戦うアメリカは、結構美しく見えたりもするのである。このアメリカと似ているのが、歴史上、何度も危機に立たされながら、その度に敵を打ち負かしながら生き抜いてきたロシアじゃないかと思う。こちらの歴史はもっと美しい。
結局、「風と共に去りぬ」が長きにわたり、感動的な名作として語り継がれているのは、嘘臭い美談ではなく、人間の本質を描き切っているからではないだろうか?

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