メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

就学生制度の高いハードル

昨日は“勤労感謝の日”だった。日本の勤労の精神も大分廃れて来たと言われているけれど、ネパールやパキスタンの就学生らによれば、今でも日本人の多くは呆れるくらい良く働いているそうだ。逆に、良く働く日本の人たちが見たら、一部の就学生らの働きぶりは少々怠慢に思えてしまうかもしれない。
以前は、配送センターの責任者の方からも「パキスタンの連中を一か所に集めておくと、喋ってばかりで作業が疎かになるから、必ず分けて配置するように・・・」と何度も注意された。
それで、彼らには「ある種の日本人にとって、仕事はイバーデット(礼拝)のようなものなんだ。君らもモスクで礼拝中にお喋りしている奴がいたら不愉快だろう・・」などと説明しておいたけれど、少しは解ってくれただろうか?
また、時間になってもなかなか現場に入ろうとしない上、作業に必要な安全靴も手袋も持ってきていない就学生がいたりすると、私もイライラして「これが戦場だったら、あんたら皆死んでるよ!」なんて喚き散らすこともある。
今でこそ、この某急便の配送センターの雰囲気はかなりソフトになっているものの、20数年前、私が長距離トラックの運転手として出入りした頃は、怒号が飛び交う中、凄まじい勢いで作業が進められていて、“現場”というより、正しく“戦場”だった。
実際、“経済戦争”という言葉もあるくらいだから、配送センターに限らず、日本の仕事場は何処でも“戦場”なのかもしれない。そのお陰で、日本は経済的に欧米から食い殺されないで、なんとかやって来られたのだと思う。
最も古い文明を誇るネパールの人たちの中には、「我々の社会にはもっと安らぎがあります」と言い、殺伐とした日本の社会を批判的に語る人もいるけれど、彼らがその安らかな文明社会に浸っていた為に、インドは英国から独立を奪われ、ネパールもかなりやられてしまわなかっただろうか? そして、今でも経済的に自立できず、所謂“先進国”のろくでもない人たちから馬鹿にされて腹を立てたりしている。
福沢諭吉が、まずは“独立自尊”を掲げたのも、世界を戦場にしてしまった西欧列強の本質を見抜いていたからに違いない。
しかし、偉そうなことを言って、日本の社会も大分弛んできたようである。
昨年、福岡にやってきて、最初の1週間は、工事現場でダンプカーのタイヤを洗う軽作業をやらされたけれど、一緒に働いた30歳の日本人青年は、その軽い仕事もスマホを見ながら怠慢な態度で行い、「あなたは、この暑さでも毎日働いているんですか? 信じられないっすよ」などと言いながら、週に3日ほどしか働いていなかったそうだ。
驚いたことに、この青年は所帯をもっていて、3人の子持ち、それでも親が面倒をみてくれるから心配ないという。
聞くところによると、今の日本にこんな若夫婦は存外少なくないらしい。これでは少子化も心配だが、そういう若夫婦がどんどん子供を作ってしまうのも心配になる。
それで私は、逞しい移民の人たちに期待したくなる。現在の就学生制度は、学費が高いので、かなり厳しいものがあるけれど、働ける時間を増やしてもらえれば、頑張る就学生も決して少なくない。
6ヶ月ほど前から配送センターに来ているネパール人就学生のビシュヌさんは、その間ほぼ無遅刻・無欠勤で作業もしっかりやる。他社のバイトもかなり掛け持ちして、『いつ寝ているんだろう?』という状態だが、日本語の勉強も疎かにせず、来た頃に比べて驚くほど上達している。
彼のように頑張る人は、高いハードルでも越えて行くのだから、学費を支援したりして、わざわざハードルを下げてしまう必要はないと思う。しかし、そのハードルを越えて来た人たちは、日本の社会が受け入れるべきだろう。彼らは、きっと日本社会の競争力を高めてくれるはずだ。
2014年10月23日(木) -仕事が礼拝というトルコ人の話-

2017年7月20日(木)

2018年6月25日(月)

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