メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

心優しいネパールの人たち

朝昼晩の送迎は、大概、まずは竹下駅の前で待っている就学生たちを乗せるところから始まる。その後は、博多駅に近い次の集合場所に向かうことが多い。
竹下から博多までは、新幹線の高架に沿った道を走る。この道はネパール人の就学生が教えてくれた。信号が一箇所しかないため、表の大通りを走るより早いそうだ。就学生たちは、この道を自転車で利用しているのである。
そのため、日本語学校の授業が終わる昼の時間帯には、バイト先へ急ぐ就学生たちが大挙して自転車を走らせ、ちょっと珍しい光景になっている。
送迎の竹下駅や博多駅近くの集合場所にも、殆どの就学生が自転車でやって来る。中には、毎朝、西新から博多まで来るネパール人就学生もいる。この2人は、早朝5時半頃に西新の寮を出て、約7キロの道のりを40分で走って来るのである。
彼らは、午前中、配送センターで働き、午後は天神にある日本語学校で勉強して、また自転車で西新の寮まで帰る。冗談かもしれないが、昨年の10月に来日して以来、JRや地下鉄など高価な交通機関を利用したことは一度もないと言う。
昨年、私は彼らが西新から来ているとは知らずに、「時間厳守」と言って、遅くなった彼らを置いて行きそうになったことがある。以来、プンベッドさんは、もう一人の友人より必ず3分前に到着して、「ベジルさんも来ます。待ってください」と私に告げる。
早く来るのは、毎朝プンベッドさんで、その逆はない。配送センターの作業も日本語を覚えるのも、彼の方が遥かに早いような気がする。しかし、他のネパール人就学生からも、“何をやっても遅い友人”を咎める声は聞かれなかった。
こう言ってはなんだが、“遅い友人”には、日本人の間であれば、ちょっといじめられても不思議ではない雰囲気も漂っているけれど、ネパール人の彼らは和気藹々とやっていて、全くそんな様子は感じられない。
もちろん、この一例を全般に適用するわけには行かないが、他にもこれに近い状況をネパール人就学生らの間で見聞している。ネパールの人たちや社会には、こういった優しさが溢れているのだろうか?
私はトルコの社会でも、同様の“優しさ”を感じていたけれど、それは古い文明社会に共通しているものかもしれない。
イスラムには、「盲人の郷へ行ったら、和を保つ為に片目をつぶった方が良い」という教えもあるそうだ。
しかし、厳しい競争に打ち勝って発展を遂げるためには、この教えに従ってばかりもいられないような気がする。
また、いつも3分遅れて来る友人を労わる優しさにより、社会全体が3分遅い方に合わせてしまったら、やはり発展はないと思う。

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