メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アメレ(日雇い労働者)

12年ほど前、通訳に携わっていたマルマライの工事現場で、大量の砂を、スコップで片づけなければならなくなったことがある。
ところが、日本人現場監督の指示をトルコ人作業員らに伝えても、「俺たちは、アメレじゃないから、そんな作業はできない」と全く指示を聞こうとしない。彼らは、現場機械のオペレーター等々の名目で雇用されたのであり、「土方ではない」と言いたかったようだ。
当時、私は、このアメレという言葉を「土方」の意だと思っていて、その後も辞書で確認したりしなかった。
『それなら、土方仕事は自分がやるしかない』と諦め、“昔取った杵柄”とばかり、私は自らスコップを振るい始めた。当時から20年ぐらい前、川越で産廃のダンプをやっていた頃は、1人でスコップを使って、4tダンプに残土やコンクリガラを積み込んだりしていたからである。
あの4tダンプへの積み込みに比べたら、砂の量は大したものじゃなかった。しかし、45歳になって体力も相当衰えていたのか、スコップを振るい出していくらもしない内に、息が切れ、膝頭が震え始めた。
これを見て、まず、当時、ウスキュダルでアパートの部屋をシェアしていたオカンとハムザが、スコップを手に近づいてくると、「マコト、お前はどいていろ!」と言って、凄い勢いでスコップを振るい出し、他にも数名やって来て、あっという間に砂を片付けてしまった。
日本の現場では、エンジニアの監督さんまで、スコップを振るって現場作業を手伝ったりすることがある。彼らも、日本企業の現場で働きながら、その後少しずつ、トルコと日本の風土の違いを理解するようになったのではないだろうか。
ところで、最近になって、“アメレ”を辞書で確認してみたら、「日雇いの労働者」と記されていた。とはいえ、日本で「日雇い人夫」と言えば、なんとなく“土方”“土木作業員”がイメージされてしまう。トルコにも似たような感覚はあるかもしれない。
まあ、今の私の職種は、その「日雇い人夫」だと説明しても、間違ってはいないと思う。

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