メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ショッピングモールの警備員

現在、トルコで民間の警備員に拳銃の携帯が認められているのは、銀行などの限られた施設だけらしい。そのため、襲撃されたナイトクラブの警備員は拳銃を携帯していなかった。
カラシニコフを乱射しながら突入してきた襲撃犯に、拳銃での対抗が可能だったとは思えないが、ナイトクラブやショッピングモール等の警備員にも拳銃の携帯を認めるべきではないかという議論が起きている。
トルコでは、もう随分前から、ショッピングモール等の入り口に、空港で見られるような、手荷物を調べるための検査機が設置されていて、来客は警備員の指示に従い、全ての手荷物をこの検査機に通さなければならない。
しかし、空港の警察官と異なり、警備員は何の武器の携帯していないので、ナイトクラブと同様の襲撃を受けた場合、防ぎようがないと言うのである。
確かに、検査機のモニターで、スーツケースに隠されたカラシニコフが確認できたとしても、拳銃を構えた襲撃犯に、「そのスーツケースを寄越せ!」と脅されれば、それまでじゃないかと思う。
そもそも、ショッピングモールの警備員たちは、そういう事態を想定した教育なども受けていないだろう。何処のショッピングモールでも、全く緊張感のない和気藹々とした警備が行われている。モニターにカラシニコフが映し出されたりしたら、警備員が真っ先に逃げ出してしまうかもしれない。
昨年の12月26日、メジディエキョイで雨に降られ、地下道を通って行ける“トランプ・ショッピングモール”に入ろうとしたところ、やはり警備員らは和気藹々とお喋りしながら、“警備”に勤しんでいた。
検査機のモニターの前に座っている奴も、お喋りに夢中で、しっかりモニターを確認しているのかどうか解ったものではない。
『おいおい、非常事態宣言中だぞ。ちゃんと仕事しろよ!』と思いながら、検査機から出て来たナップザックを取って、そのまま行こうとしたら、お喋りをしていた警備員に呼び止められた。
振り向くと、警備員は、「これ、お忘れですよ」と微笑み、折り畳みの傘を差しだしてくれた。ナップザックと共に傘も検査機に通して忘れていたのだ。
心の中でぶつくさ言っていたため、なんだか恥ずかしくなって、丁重に礼を述べて傘を受け取った。お喋りはしていても、仕事は疎かにしていなかったようである。