メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

死刑

昨日(2016年10月31日)、テレビの討論番組で、法律学の専門家が説明していた。法を改正しても、その法律を過去に遡及して適用することはできないから、死刑制度を復活させたところで、7月15日クーデター加担者の処刑は不可能であるという。
私は、こういった法学の基本的な事柄も良く解っていなかった。専門家は、「トルコがこれを無視して、クーデター加担者を処刑すれば、国際社会で孤立してしまうだろう」と警告している。
*(最近、トルコのニュース専門テレビ局の多くは、“YouTube”からもリアルタイムで視聴できるようになった。日本でも同様の試みがあると良いのだが・・・)
死刑復活論議がまた再燃しているのは、先日、エルドアン大統領が、何処かの式典で演説した際、死刑復活を求める聴衆の呼びかけに答えて、「その日は近づいている」などと発言した所為じゃないかと思うが、どれほど現実味のある話なのか良く解らない。
8月10日に、大統領府前で開かれた大集会では、エルドアン大統領自身も、「議会が否決すれば、私は何も出来ない。それが(民主主義を守るために)犠牲となった人たちに報いることだ」と含みを持たせた発言をしているし、ユルドゥルム首相は、死刑復活の議論から一貫して距離を置いて来ている。
それに、クーデター事件から3ヶ月以上経っているのに、未だ議会でも審議されていないのは、なんとも奇妙である。
そもそも、エルドアン氏が首相時代から繰り返して来た「中絶は殺人である」とか「避妊を禁止すべき」といった爆弾発言が、実際の法改正等に繋がった例はまずなかった。いつも、マスコミで盛り上がるだけで、うやむやのまま終わってしまう。
そのため、ああいった発言は、議題をすり変えようとする「目くらまし」じゃないのかと分析する識者もいる。
いつだったか、当時のエルドアン首相が、式典の演説で「中絶は殺人」といった爆弾発言をしたら、テレビ局のカメラは、参席していたアクダー厚生相の反応を素早く捉えていた。
アクダー厚生相は、隣の閣僚に何か耳打ちしながら、可笑しそうに笑っていたのである。多分、『うちの大将、またやってくれたよ。明日、俺のところに新聞記者が押しかけてきて大変だぜ』みたいな軽口でも叩いていたのではないかと想像する。
しかし、死刑を全廃したEUが、この死刑復活論議に反発を示すのは当然かもしれないが、死刑制度を続けている日本でも、大袈裟に報じられているのは、何故だかさっぱり解らない。
トルコはEUに準じて、2004年に死刑を全廃しているけれど、それ以前も、1984年以降、死刑が執行されたことは一度もないそうである。