メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

発展の原動力?

(10月28日)

嫉妬やコンプレックスといった感情は、人が発奮して頑張る原動力になるとも言われている。負け犬根性が強くて、最初から引いてしまう私には、この感情が足りていないかもしれない。

幕末、アメリカから帰国して、将軍に拝謁した勝海舟が、老中にアメリカと日本の相違を問われて、「我が国と違い、アメリカで高い地位にある者はみなその地位相応に賢うございます」と答えた話は有名だけれど、家格の低かった勝海舟も、コンプレックスに近い感情を懐いていたような気がする。

しかし、勝海舟は、その数年後に、自分が老中と同等の地位に就いてしまったのだから、仮に嫉妬やコンプレックスがあったとしても、それは正しく原動力としてプラスに作用していたはずだ。

とはいえ、その地位に上り詰める機会を殆ど閉ざされてしまった人が、同様の発言をした場合、必ずしもそれがプラスに作用しているとは言い難いと思う。単なる怨望になり果てて、それまでに築き上げられた知性と見識に、残念な影響を及ぼしてしまう可能性もあるだろう。

個人ばかりでなく、一つの社会や国においても、嫉妬やコンプレックスは、プラスにもマイナスにも作用するのではないか?

明治以降の日本では、プラスの方が遥かに大きかっただろう。しかもそれは極端な恨みを伴うものではなかった。

オスマン帝国末期以来のトルコでも、プラスの作用はマイナス面よりも大きかったに違いないが、日本で見られるほどの差はついていないような気もする。歴史的な背景が異なるから、比較したらいけないかもしれないけれど・・・。