メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

自然の災難?

今日、カドゥキョイから帰りのバスは、夕刻の混雑する時間帯で、2時間近く掛かった。
1時間ほど経過した頃だろうか、車内も混んでいて、少し蒸し暑くなった所為で、気分の悪くなった4~5歳の男の子が、前の席に座っていた50歳ぐらいの男の背中にゲロを吐いてしまった。
男はウインドブレーカーのような上着を羽織っていたので、慌てて立ち上がると、それを脱いで背もたれに置いた。幸い、中のシャツは無事だったようである。
もちろん、嫌な顔はしていたけれど、怒るわけでもなく、彼はそのまま何も言わずに立ち尽くしていた。座席も汚れてしまっていたからだ。
子供を連れていたのは、45~50歳ぐらいの田舎風にスカーフを被った女性と、16~20歳の現代風な若い女性で、祖母と叔母(子供の母親の妹)だったのではないかと思う。母親らしき人はバスに乗り合わせていなかった。
男の子を膝の上に座らせていた若い女性が、子供の口周りを拭ったりして処置に努め、後ろの席に座っていた祖母は心配そうに見守り、もう一人、全くの他人と思われる現代風な若い女性(20~23歳)が、ティシュを差し出したリ、手提げ袋を持ってあげたり、励ましの言葉を掛けたりしていた。
私も少しだけ残っていたティッシュを差し出したところ、祖母から「ありがとう」と言われた。
一段落した後で、祖母は若い女性にも礼を述べていたけれど、結局、最後まで、ゲロを掛けてしまった男性には、謝罪どころか、全くの没交渉で、お互い声も交わさなければ、顔さえ見合わせなかったような気がする。
子供を連れている女性たちにしてみれば、ゲロは自然の成せる業で防ぎようがない。男性の方も、それを「自然の災難」と諦めていたのかもしれない。日本ではちょっと考えられない光景のように思えた。
いつだったか、やはりカドゥキョイから帰って来るバスの中で、泣き続ける乳児に苛立った中年男が、「子供を静かにさせてくれ」と母親に文句を言った。
すると、周囲の乗客たちは、「子供は泣くのが当たり前だ」「あんたは子供を育てたことがないのか?」「嫌ならあんたが降りろ!」と口々に言い返して、男を黙らせてしまったのである。
トルコの社会は、子育てをする人たちにとても優しい。日本もあれぐらいになれば、少子化を防げるかもしれないが、歴史や伝統、文化が根本的に異なるから、そう簡単には真似できないだろう。

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