メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

庶民派政治家の面目躍如

トルコでは、首相や大統領が、一般市民の家を訪問して交流をアピールするのは、以前から見られたけれど、エルドアン大統領ぐらい頻繁に行う例もなかったような気がする。
反対派は、『人気取りばかりに精出しやがって』と言うかもしれないが、以下の動画などを見ていると、庶民的な家庭の雰囲気に、これほど溶け込んでしまうのは、エルドアン大統領ならではの境地じゃないと思う。


Cumhurbaşkanı Erdoğan, Vatandaşın Evinde İftar Yaptı

また、エルドアン大統領は、手の甲にキスして敬意を表す儀礼もなるべく避けて、対等を強調しているように見える。オザル大統領やデミレル大統領は、最初から鷹揚に手の甲を差し出して、この儀礼を受けていた。
以下の動画では、首相時代に、「5分でいいから、家に寄って」とせがむ子供の家を訪れた様子が紹介されている。

www.youtube.com

これも反対派は、「あんなものは、やらせに決まっている」と言うだろう。それならば、遊説中の首相の前に、警備の隙間をかいくぐって現れ、駄々をこねた子供の演技力はなかなか評価に値する。
子供の演技力だけではない。子供の家で両親と話すエルドアン首相(当時)のざっくばらんな口の利き方は、庶民派政治家の面目躍如で、やらせ云々などどうでも良くなってしまう。
「なんだ、まだチャイの用意も出来てないのか? この子がチャイどうぞと言うから来たのになあ」といった風にチャイをせかして笑わせるなど、すっかり溶け込んでしまっている。
エルドアン氏を嫌う知識人が、これを見て「なんと下卑た奴だ」と戦慄を覚えたとしても、人々は、「エルドアンも私らも下品で悪かったねえ」と軽く受け流すだろう。
クーデター事件で立ち消えになったようだが、それまで、「エルドアンは大学を卒業していない」という疑惑ネタが随分メディアを騒がせていた。
これを追及しようとする知識人やら文化人の中からは、「大卒の学士と小学校しか出ていない人間の票が同じ重みであるのはおかしい」という発言も聞かれ、既に反発を招いていたため、あのネタを提供したのも、ひょっとして大統領サイドじゃないかと首を傾げたくなるほど、理解に苦しむ疑惑騒動だった。
騒いでいた知識人は、あれが選挙にどういう影響を及ぼすのか考えて見ないのだろうか?