メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アメリカが国家を持たせたい最大の民族

「国家を持たない最大の民族クルド」というのは、いったい何を根拠にしているのだろう? 
まずは民族の定義からして、様々な見解があり、一定の基準など何処にもないようである。言語上の相違をもとにして、スペイン人とカタロニア人、ロシア人とウクライナ人が、それぞれ別の民族に区分されるなら、東京人と関西人、沖縄人等々も全て別の民族として扱わなければならなくなってしまうらしい。
しかし、多少の相違はあっても「同じ系統の言語」を話すという基準にすれば、もちろん“日本人”は皆同じ民族であるし、ウイグル人からトルコ人までを含むテュルク語系の人々も全て同じ民族と見做して良いそうだ。この場合、ペルシャ語系の言語を話すクルド人は、イラン人と同じ民族になる。
歴史的な経緯を考えた場合、日本人と沖縄人は、144年前まで異なる国の歴史を持っていたが、トルコ人クルド人は600年来同じ国の住人である。
また、クルド人の人口は、2千8百万に及ぶとされているけれど、インドのタミール人は、ヒンディー語とは別系統の言語を話し、5千万以上の人口を有している。
要するに、最大の民族クルドとは、「アメリカが国家を持たせたい最大の民族」という意味じゃないだろうか?
アメリカは、現在も、北シリアでクルド人の国家を建設することに執着しているのではないかと言われている。まず、ここに拠点となるクルド人国家を築いたのち、北イラクやトルコ南東部のクルド人も糾合して、自分たちの意のままになる大クルディスタンを構想しているらしい。
トルコとしては、これを何としても阻止したいところだが、クルド人民衆との対立は避けたいだろう。そのため、北シリアの有力なクルド人部族とはもちろん、アメリカが支援しているPYDとも、水面下では接触を図っているかもしれない。
最近、トルコの識者たちは、国際政治を語る上で、さながら常套句のように次の言葉を使っている。「国際関係には、永遠の敵も永遠の味方もいない」というのである。
この先、外交政策に如何なる変化があったとしても、驚いてはならないようだ。そういった大きな転換を迫られた場合、トルコの政治家たちは、「昨日は昨日、今日は今日」と言って、いとも簡単に切り抜けてしまう。
この言葉は、社会的にも広く受け入れられているから、反発を買う恐れもない。政治家に限らず、トルコの人々は、皆したたかだと思う。

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