メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

紳士的な警察官

先日話題にした「ギュレン教団による士官高校の不正入試」(8月18日付け)、教団メンバーの受験生は、数学のテストを事前に入手することで、30の設問に満点解答していたらしい。
しかし、不正といっても、これはある程度数学の実力がなければ通用しなかっただろう。おそらく正答を丸暗記して試験に臨んだわけではないと思う。
ギュレン教団は、もともと優秀な子供たちを選抜して、さらに尊師への信仰を拠り所に、厳格な規律のある教育を行っていたのだから、不正などしなくても、かなりの確率で入試をパス出来たはずである。
そのうえで不正を図れば、他の実力のある受験生の入学を阻み、教団メンバーの士官高校内に占める割合を一層高めることが出来たのだろう。ギュレン教団は、士官高校に限らず、同様の手口を警察学校など至るところで使っていたと言われている。
10年ぐらい前、不正については未だ明らかになっていなかったものの、ギュレン教団の優秀なメンバーが、警察機構や教育機関に相当数入り込んでいるという噂は、既に公然と囁かれていた。だから、当時、警察官の質が目に見えて良くなってきたのは、ギュレン教団のお陰じゃないかと言う人もいた。
かつては、岡っ引きに毛が生えたような警察官も少なくなかったのである。
2000年頃だったか、スルタンアフメットで非常に日本語が上手い警察官に声を掛けられた。驚いて、「大使館勤務でもしていたんですか?」と訊いたら、「いやあ、カチャック(不法滞留)ですよ」と笑っていた。名古屋辺りの建設現場等で働いていたらしい。
当時は、そんな人でも簡単に警察官として採用されていたのだろう。
その後、システムの改善が図られ、警察学校で教育を受けた者を採用するなどして、警察官の質は著しく向上したとされているけれど、これにギュレン教団が果たした役割は大きかったに違いない。
2011年、イエニドアンに越して来て、地域の警察署で滞在許可の延長を申請したところ、担当官がとても紳士的で親切だったので、私は『教団の人じゃないのか?』と思ってしまったほどである。
昨年から、滞在許可の申請で警察署に足を運ばなくても良くなったため、どうなったのか解らないが、あの担当官は未だ在職しているだろうか?
現在、軍や警察などあらゆる機構から教団メンバーの排除が進められているものの、これによって優秀な人材がごっそり抜けてしまうのではないかという声が上がっている。だからと言って、教団のメンバーをそのままにしておくわけにも行くまい。各機構の再編はなかなか難しそうである。