メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

騎馬民族と中国から始まる夢物語

40年以上前、中学高校の頃、トルコに関心を持ち始めたのは、騎馬民族への興味からだった。井上靖の「蒼き狼」などを読んで、ぼんやりした憧れを懐いていたのである。
チンギスハンのモンゴルはもちろん、ヌルハチの後金(清朝)に至るまで、騎馬民族の物語には一通り目を通していた。
モンゴル帝国が、往時を偲ばせるような遺跡を残さなかったところもロマンを掻き立てるけれど、清朝満州族が殆ど中国に同化して消え去ってしまったのは、またなんとも言えない歴史の不思議を感じさせる。
満州族はどのように母語を失って行ったのだろう? 康熙帝が孫の乾隆帝に書いたという満州語の手紙が残っているそうだから、少なくともその辺りまでは満州語が解っていたはずである。
ところが、ラストエンペラー愛新覚羅溥儀は、儀礼的な常套句を満州語で述べる臣下へ、「立て!」と命じる言葉以外には満州語を知らなかったらしい。
一方、太祖ヌルハチの外祖父に当たる人物でも、中国語の読み書きをこなしていた史実が伝えられている。満州族はもともと広大な中国を構成する一要素に過ぎなかったのかもしれない。
とはいえ、固有の言語と文化を有しながら、文明的には漢族より遥かに劣っていた少数民族満州人が、中国を支配するためには、かなりの無理を利かせなければ難しかったのではないか。行政の実務を担っていたのは漢族であっても、要職毎に満州人のお目付け役が必ずついていたという。
あまり健全な支配体制ではなかっただろう。しかし、清朝ばかりでなく、モンゴルに征服された後の明朝も、かつての大盤振る舞いな中華帝国とは既に異なっていたような気がする。
文明的な漢族の人たちにとって、北方の騎馬民族は甚だ迷惑な存在だったに違いない。
さて、ここでまた勝手な思いつきを述べさせてもらうと、現在の中国共産党は、北京を首都にしている点から言っても、なんだかこの明~清の系譜である。南京を首都にしていれば良かった・・・。
いずれにせよ、中国共産党の支配が相当無理な体制であるのは間違いなさそうだ。そこでだが、半分は冗談、残りは真面目に、中国の人たちが最も幸せになれるのは、アメリカに支配されてしまうことではないかと思ったりする。
アメリカに支配されたところで、伝統的な中国の社会はびくともしない。人々は厳格なアングロサクソンの法のもとで、より活発に事業を営むことができる。それに、なにしろ世界一の強力な軍が守ってくれるのだから、もう日本から侵略される心配なんて冗談のようだ。北方で騎馬民族に取って代わったあの禍々しいロシアも敵じゃない。
中国は巨大な香港となって繁栄を遂げるだろう。宗主国となったアメリカへの移住もかなり楽になる。2億人ぐらいは、あっと言う間かもしれない。これでアメリカは巨大なシンガポールとなり、世界が繁栄を謳歌することになる。
そして、アングロサクソンの社会の隅々まで、美味しい中華料理が普及して、彼らも少しは丸くなってくれるはずだ。これ、なかなか良い夢物語じゃないかと思うけれど・・・。

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