メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

死刑と民主主義

(8月11日)

連日連夜、各地で繰り広げられていた「クーデター反対集会」も、昨晩(8月10日)を最後にようやく閉幕した。

当初は、日曜日の「民主主義と犠牲者のための大集会」で大団円を迎えるはずだったが、どういうわけか、突然3日間延期された。

嘘か真か、8月9日のエルドアン大統領訪露に合わせて、再びクーデター派の残党が決起して各都市の要所を占拠する恐れがあったため、反対集会を続けて、これを未然に防ごうとしたなんていう説もある。かなり眉唾に思えるが、いずれにせよ何も起こらなくて良かった。

アンカラの大統領府の前で続いていた「クーデター反対集会」は、昨晩の10時過ぎ、エルドアン大統領が壇上に姿を現し、クライマックスを迎えた。

そして、エルドアン大統領の演説も終わりに近づき、クーデター加担者への厳罰が強調されて盛り上がりを見せると、すかさず会衆から「死刑!死刑!」の連呼が巻き起こった。

日曜日の大集会では、「議会が死刑を決議すれば、私はこれを承認する」と応じたエルドアン大統領だったが、昨晩は、それにもう一言付け加えている。

「議会が否決すれば、私は何も出来ない。それが(民主主義を守るために)犠牲となった人たちに報いることだ」といった内容の言葉である。エルドアン大統領は、なかなかバランスの取り方が巧い。

死刑復活には、憲法の一部改正が必要と言われていて、そうなると、CHPとHDPが反対票を投じれば、これは否決されてしまうらしい。HDPが反対するのは言うまでもないし、CHPのクルチダルオウル党首も既に「死刑反対」を表明している。

後になって、クルチダルオウル党首が大衆におもねるような色気を見せたりしたら困るけれど、その心配はないと思う。

「民主主義と犠牲者のための大集会」でも、クルチダルオウル党首は会衆に迎合する姿勢を全く見せなかった。喝采もしなければ声援も送らない冷たい会衆の対応に動じている気配さえ感じられなかった。

会衆の殆どはイスラム的な保守層なのだから、少しはリップサービスしても良かったくらいだが、保守派の嫌いなナーズム・ヒクメットの詩を引用したりして、いつも通りのクルチダルオウル党首だったのである。