メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

モハメド・アリ逝く

昨日、エルドアン大統領は、“トルコ輸出業者会議”の総会でスピーチした際、最後に「アリの訃報」を伝えて、2分以上にわたり功績や思い出について語っていた。
「・・・若い頃、私たちは夜中に白黒テレビで彼を観ていた。とてもエキサイトしながらその姿を追っていた。子供の頃から青春時代にかけて、いつもはボクシングに余り関心のない人たちも含めて、彼の試合を観るために朝までテレビやラジオの前で待っていた。・・・」
アリがジョージ・フォアマンをKOで降した“キンシャサの奇跡”は、1974年のことだから、エルドアン大統領も未だ20歳の若者であり、おそらく朝までテレビの前で待っていた人々の中にいたのではないかと思う。
その2年後の1976年、アリはイスタンブールを訪れ、人々の熱狂的な歓迎を受けたけれど、当時の新聞に掲載された写真を見ると、エルドアン大統領の師である故ネジメッティン・エルバカン元首相と壇上に上がって群衆の歓呼に応え、ブルーモスクで礼拝に参列したようである。これは、若き日のエルドアン氏に忘れ難い印象を残しただろう。
私にとっても、アリは“絶対的なヒーロー”であるため、エルドアン大統領のスピーチには思わず感動してしまった。
また、エルドアン大統領に限らず、オバマ大統領を始め世界各国の政治家や著名人が、アリの死を悼んでメッセージを発信している。それが、どういうわけか、日本の報道では、40年前に、アリと良く解らないイベントで共演した元プロレスラー氏のコメントばかりが目立っていて悲しくなる。
元プロレスラー氏は、ボクシングの選手だったわけでもなければ、世界一流のアスリートの中にも数えられていないだろうに、コメントの中でアリを“ライバル”と呼んでいた。草葉の陰で故ジョー・フレージャー氏が聞いたら驚くに違いない。
もっとも、元プロレスラー氏が背負って来たプロレスの歴史は、日本の敗戦から復興の歴史と微妙に重なっているような気がする。だから、この“プロレスのヒーロー”を批判したらいけないかもしれない。
しかし、日本はいつになったら、戦後の闇や“力道山の空手チョップ”から解放されるのだろう。もう空手チョップの演出などしなくても、実力で大リーガーを捻じ伏せる野球選手たちが活躍しているというのに・・・。 

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