メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

フェトフッラー・ギュレン系のメディア・グループが政府の管理下に・・・

ザマン新聞等が政府の管理下に置かれたこの事件は、日本でも報道されているようだ。
なにしろフェトフッラー・ギュレン教団は、既にトルコで“テロ組織”の扱いだから、これも以下にお伝えした「無理なデトックス(解毒)」の一環であるらしい。
ジュムフュリエト紙のジャン・デュンダル編集長らが拘束された騒ぎも、このギュレン教団の一掃と関連付けて見る向きがある。
ジャン・デュンダル氏が報じた「MIT(国家情報局)によるシリアへの武器輸送」は、ギュレン教団のメンバーとされる憲兵将校が前以てマスコミにリークしてから“MIT”の車両を検査した謀略と言われ、関係者は逮捕されて裁判が進められている。
その為、歴史学者のハリル・ベルクタイ氏によれば、ジャン・デュンダル氏の行為は、元のニュースをコピペして報じただけで、およそ“国家機密漏えい罪”などに相当するものではないという。
それが何故、拘束されてしまったのかと言えば、他ならぬエルドアン大統領が自らデュンダル氏を告訴したためだ。その後、憲法裁判所の決定によりデュンダル氏らが釈放され、事態は収まるかに見えたものの、エルドアン大統領が「憲法裁判所の決定には従えない」などと言い出して、また騒ぎが大きくなっている。
ハリル・ベルクタイ氏は、この騒ぎの当事者である「ジャン・デュンダル氏」「エルドアン大統領」「憲法裁判所」の全てに問題があるとして、厳しく非難していた。
まず、デュンダル氏は、非民主的な教団の謀略に加担しており、民主主義など語る資格は全くない。憲法裁判所の決定も明らかな越権行為である。エルドアン大統領の告訴は、もちろん国民に認められた権利だが、大統領の立場でこの権利を行使するのは全く不適切で、どうかしている。
さらに、「憲法裁判所の決定には従えない」とは、いったいどういうことなのか? しかし、関係所管は速やかに「決定」に従って、デュンダル氏らは釈放された。等々・・・
このようにベルクタイ氏は述べて、エルドアン大統領の周囲にこれを思い止まらせる人はいなかったのか、と嘆いている。
選挙が続いたこの2年で、メディアは反エルドアン・AKP、親エルドアン・AKPの真っ二つに分かれてしまった。選挙が終わった後もこの状況には何の変化も見られない。余計、酷くなったような気もする。
トルコでは、政治家等を支持して、何にでも拍手喝采を送る人たちを「シャクシャクチュ(喝采屋?)」と言うけれど、親エルドアン・AKPのアクシャム紙なども、何だか喝采屋風のコラムニストばかりになってしまった。
こういった風潮を批判し続けていたギュライ・ギョクテュルク氏とエティエン・マフチュプヤン氏は、既にアクシャム紙を離れている。ギョクテュルク氏の場合は、辞めさせられたも同然だったらしい。
ところで、この喝采屋的なジャーナリストらによれば、エルドアン大統領が「憲法裁判所の決定には従えない」と言ったのは、告訴した当事者として「告訴を取り下げるつもりはない」という発言であって、大統領の立場で憲法裁判所への不服従を明らかにしたものではないそうである。その為に自分で告訴した・・・?
こういうのは、騒ぎがある程度収まってからじゃないと、何も見えて来ないのではないか。例によって、気が付いたら、うやむやのまま終わっている可能性もある。
しかし、根底にあるフェトフッラー・ギュレン教団の問題は、非常に重大であり、政府もうやむやのまま終わらせるつもりはないだろう。
そして、「羊をめぐる冒険」に出て来る「羊に入り込まれた男」じゃないけれど、相手はなかなか厄介な組織である。しかも、AKPの内部にも未だシンパがいるらしい。
これと闘ってデトックス(解毒)するのは、普通の論理的な思考では難しそうだ。暴力団の抗争みたいな所もあるかもしれない。
なんとなく、この辺りの駆け引きをエルドアン大統領は良く心得ているような気がする。デュンダル氏の騒ぎにも他の伏線がなかったとは言い切れない。
いずれにせよ、将来に禍根を残さぬよう、きれいに排泄・デトックス(解毒)してもらわなければ困ると思う。
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