メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの「聖域」?

(2月16日)

昨年の11月、グーグルアースのストリートビューで、トルコの街角も見られるようになってから、直ぐにアレムダーのメイハーネ(居酒屋)風料理店の場所も確認してあった。

店の外見とおおよその位置関係が思い出せるだけで、名称も住所も解らない場合、ストリートビューはとても便利である。もう一度、その辺りを歩き回るように、街角の実写風景を見て行けば、この目で何処だったのか確かめられるからだ。

実際、料理店はストリートビューにばっちり写っていて、曖昧な記憶を正すことができた。

それから3カ月経った昨日、『天気も良いし何処かへ散歩に行くか・・』と思いながら、グーグルアースを見ていて、「あっ!」と驚いた。料理店のある辺り一帯が、ストリートビューから消えていたのである。

何らかの理由で削除されてしまったようだけれど、もちろん料理店の存在が「理由」になるわけはない。考えられるとしたら、空軍と陸軍の基地の存在だろう。

「もしや?」と思って、イスタンブールにある他の軍事施設を見たら、その付近一帯の道路は、やはりストリートビューの範囲に含まれていなかった。ハルビエの軍事博物館前の大通りもストリートビューでは眺めることができない。

でも、クスクルのエルドアン邸周囲は、当然かもしれないが、削除されることもなくそのままだった。

アンカラも同様だが、こちらは国会周辺の官庁街も、かなり広域にわたってストリートビューから外されている。しかし、大統領府前の通りは相変わらず写っているし、アタテュルク廟などは、車両の入れない敷地内まで見ることができる。

ここで日本の状況が気になり、市ヶ谷や朝霞の駐屯地、横田の米軍基地などを一通り見たが、いずれも周囲の一般道は当たり前にストリートビューで眺められる。朝霞では、駐屯地内を走る車両も写っていた。

トルコを取り巻く国際情勢は厳しく、「国防」に一層神経を尖らせているのは解るけれど、グーグルアースのストリートビューまで排除する必要がそれほどあるとは、ちょっと考えらない。過剰反応に思えるが、どうなんだろうか?

また、この一件では、トルコの「聖域」が何処であるのか、なんとなく解ったような気もする。

例えば、昨年の12月、エルドアン大統領の招きに応じてトルコへ一時帰国したノーベル化学賞受賞者のアジズ・サンジャル氏は、「この受賞はトルコのものであり、メダルはアタテュルク廟に捧げたい」と語り、トルコ軍参謀本部を訪れて、メダルをフルスィ・アカル参謀総長に託したそうだ。

どうやら、アタテュルク廟を管理しているのが参謀本部であるため、そういう手順を取ったらしいが、一応トルコ軍の最高司令官は「大統領」のはずである。

おそらく、こういった点も踏まえて、一部のリベラル派知識人は、トルコの民主化を危うんでいるのだろう。しかし、何事も段階を取っ払って一気に進めてしまうことが、必ずしも最善であるとは限らないのではないかと思う。

今のところ、様々な力関係の微妙なバランスの上に、トルコの政治は成り立っているようだけれど、それが却って程良い緊張感を生んでいるかもしれない。

なんて、昨日、こんなややこしいこと考えて、昼間からビール飲んでいたわけじゃないが、ストリートビューの削除に驚いて、あの料理店を散歩の目的に定めてしまったのは確かである。

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