メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

デトックス(解毒)と大手術

ウィキペディアの記述によれば、人間の“便”の大部分を構成しているのは、「水分(60%)」と「腸壁細胞の死骸(15%~20%)」「細菌類の死骸(10%~15%)」などで、食べ物の残滓は5%程度に過ぎないらしい。

体内に蓄積されていた毒素も含まれているというから、まさしく「汚物」で、溜めずに排泄しないと、様々な悪影響を人体に及ぼす。便通が良いのは、やっぱり健康の証に違いない。

さらに、自然には排泄され難い毒素を取り除く「デトックス(解毒)」というのも、最近流行っているそうだが、そこまでやる必要があるのかどうか良く解らない。

自然に任せておいても、そういった毒素の蓄積が許容範囲を越える前に、本体の人間という「毒」がデトックスされているのではないだろうか?

地球に蓄積される「毒素」についても様々な議論がある。温室効果をもたらす二酸化炭素オゾン層を破壊するフロンガス、そして放射能と各々の危険性が指摘されているけれど、専門知識のない私には、いずれの説も解り難い。

しかし、こちらも何だか、議論の答えが出る頃には、「毒素」をまき散らしている人類そのものが滅亡しているような気がする。人間の寿命が尽きるように、人類も滅亡すれば、地球もいずれ無くなる。これには議論の余地などないはずだ。

それから、社会における「汚物」とその排泄も、やはり人間の体の営みに似ているかもしれない。

人間の腹に、いつも「汚物」が溜まっているように、不正や犯罪のない社会は有り得ないけれど、それが正常に排泄されていれば、社会も健康を維持することができる。

ところが、現在のトルコは、国家機構の内部に巣食っているとされるフェトフッラー・ギュレン教団の組織、それから、南東部の各地に立て籠もっているPKKの組織という異なる種類の「汚物」を排泄しようと躍起になっていて、これがまたいずれも正常な排泄とは言い難い。

蓄積された「汚物」が放っている「毒素」も非常に強いため、致し方ないのかもしれないが、ギュレン系に対しては、強い副作用を伴う無理なデトックス療法、PKKには、さらなる危険が伴う乱暴な外科手術で、既に大量の出血を余儀なくされてしまった。

ギュレン系のデトックスでは、政権与党AKPの党内にいるビュレント・アルンチ元副首相のような大立者がどういう扱いを受けることになるのか注目されている。

一方、PKKを切断排除する大手術は、地域のクルド人住民からも一定の支持を得たと言われているが、PKKに反旗を翻した住民たちも、決して「AKP政権や軍そのもの」の支持に回ったわけではないそうだ。

彼らは、90年代に多くのクルド人が謀殺された事件の解明を望んでいるだろう。この事件には軍の関与が囁かれている。彼らの恨みは大きいに違いない。

しかし例えば、体内に入り込んだ異物も、生活に支障がなければ、そこに潜んだまま、忘れ去られていたりする。それを無理に取り除こうとして、却って危険な手術になってしまう場合もある。

でも、あれを取り除かなかったら、クルド問題の政治的な解決は難しいのではないかと思う。