メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ジエリスタンのテロリスト?

イラク料理屋などもあるアクサライの界隈には、ケバブの類をメインにした庶民的な店が軒を並べている。レバー(肝臓)串焼きの「ジエリスタン」はその中でもひと際目立っていた。
ジエルがレバー(肝臓)の意で、ジエリスタンは「レバーの国」といった造語である。前を通ると、いつも賑わっていて、繁盛しているのが分った。
値段も手頃で、美味そうな雰囲気が漂っていたけれど、レバー串焼きの他、メニューはスタンダードなものばかりで、これといった特色がない。そのため、なかなか入ってみる機会がなかった。
先週、ネットでニュース番組を観ていたら、この店が出て来たので、『ああ、あそこだな』と興味津々に思いながら、リポーターと店主の話に耳を傾けた。店主はモジャモジャの立派な顎鬚を蓄えていて、どうやら、これが問題になったらしい。
店主によれば、数年前、エルドアン首相(当時)の次男ビラル氏が、ここへケバブを食べに来たので、一緒に写真を撮って、SNSに載せたところ、「首相の次男がアルカイーダのメンバーと接触」などというコメントと共に、その写真が色んな所で使われてしまったという。
番組では、当時、野党CHPのスポークスマンがその写真を掲げて、エルドアン首相を激しく糾弾している場面も紹介されていた。
最近、その写真をロシアのメディアが取り上げて、今度は「エルドアンの息子がISのメンバーと接触」というネタで報道したそうだ。
アクシャム紙のギュライ・ギョクテュルク氏は、「野党、および反政権派のメディアが、これほどまで低い次元に成り下がったことは、未だかつてない」と嘆いていたけれど、ロシアのメディアも相当程度が低いようである。
トルコの反政権派にしたって、こんなガセネタを垂れ流すことで、いったい何が期待できるのだろう。殆ど自己満足にしかならないような気がする。呆れ果てて、「自爆テロならぬ“自慰テロ”か?」とつまらない駄洒落の一つも言いたくなってしまう。
という次第で、日本の“自慰テロリスト”としては、これを看過するわけにも行かなくなり、昨日は、早速アクサライまで足を運び、ジエリスタンでレバー串焼きを食べて来た。
串焼きの味はもちろん、従業員のサービスも良く、なかなか研究熱心で商売上手な感じがした。どうりで繁盛しているはずだ。
昨日も、昼を食べに来た客たちで店内は混み合っていたが、そのうえBBCの取材班まで来ていた。看過できなくなったのは私だけじゃないらしい。
取材班は、日本人の来客が興味深かったのか、顎鬚の店主さんと私を握手させて、なんだかやらせっぽく撮影しようとする。「まさか、日本のテロリストにするんじゃないでしょうね?」と訊いたら、「ハハハハ」と笑っていた。

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