メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

文明の揺籃“アナトリア”

いつだったか、トルコを訪れた人が、料理について、「トルコにもビーフストロガノフに似た肉料理があった。ロシアから伝わったのだろう」というような感想を記していたのを読んで溜息がでた。
オスマン帝国の宮廷料理は、19世紀になって、フランスの影響を受けたらしいけれど、これはロシアも同じはずである。しかし、それ以前には、オスマン帝国の食文化がフランス等へ影響を与えたこともあったそうだ。この点、ロシアはどうだろうか? 
オスマン帝国の都コンスタンティノポリの食文化は、おそらく、ギリシャ人らが東ローマ時代から受け継いできた伝統が土台になっていて、そこへ中東や中央アジアの味覚が加わって行ったのではないかと思う。
なにしろ、ヨーロッパの人たちは、その料理を世界三大料理の一つに数えていたのである。ロシア料理など、五大か七大まで枠を広げても、なかなか入れてもらえないだろう。
まあ、我々東洋人にしてみれば、世界三大も何も「中華」に比肩し得る料理なんて何処にもないような気がするけれど・・・。
ロシアの人たちが大得意にしている“飲酒”にしたって、多分、その歴史は中東やアナトリアに遠く及ばない。アルコールの蒸留はアラビア人の発明である。
ただ、アナトリアの人たちは、その後、イスラムへ改宗して行ったため、あまり飲まなくなり、コンスタンティノポリから伝えられたギリシャ正教に改宗したロシアの人たちは、その分まで浴びるように飲んでいる。
しかし、こういった歴史的な過程が、ロシアや西欧の人たちにとっては、腹立たしくて堪らないのかもしれない。
コンスタンティノポリ、アナトリアは彼らにとって、文明の揺籃の地だったはずなのに、いつの間にかイスラム教徒のトルコ人に分捕られてしまった。
(それと共に、この文明の揺籃の地の人々が、いつのまにかイスラムに改宗してトルコ語の話者になっていた、ということもあるような気がする)
その為、西欧やロシアの視点からトルコを見た場合、それは、中国や韓国の人たちが語る日本と同じようになってしまう恐れもあるのではないかと思う。まるで、ファシスト・アベが支配する凶悪な国家といった風に・・・。
もちろん、西欧にも、公正に見ている識者は少なくないだろうし、まさか韓国ほど激しい偏向もないはずだが、トルコを描いた映画には、あの「ミッドナイト・エクスプレス」のような凄まじい歪曲もあった。
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そういえば、映画「ミッドナイト・エクスプレス」では、アメリカ人が法廷で、「あんたらが何で豚を食べないのか解ったよ。それはあんたらが豚だからだ!」とトルコ人を罵る場面があったけれど、あれを、やはり豚を禁忌とするユダヤ人に向かって言ったら、どうなるだろう? 
あの映画で、悪辣なトルコ人刑務所所長を演じていたのは、ユダヤ系の米人だったが、彼はあの台詞を何と思っていたのだろうか?