メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

新内閣/エルドアン大統領の娘婿がエネルギー相に

トルコで新内閣発表のニュースは、露機撃墜事件の為に、多少影が薄くなってしまったものの、もちろん大きな話題になっている。
中でも、メフメット・シムシェク前財務相が副首相となって、経済政策の舵取りを任され、長い間この職責にあったアリ・ババジャン氏が内閣から外されてしまったのは、驚きをもって迎えられているようだ。
エルドアン大統領と同じく、イスラム主義運動“ミッリ・ギョルシュ(国民の思想)”の出身であるババジャン氏と異なり、シムシェク氏には、どちらかと言えばリベラルな雰囲気が感じられるけれど、外様であるだけに、かえって独自色は打ち出し難いかもしれない。いずれにせよ、経済政策では、ババジャン氏の路線を引き継ぐのではないかと言われている。
それから、エルドアン大統領の娘婿であるベラット・アルバイラク氏が37歳の若さで初入閣し、エネルギー相に起用された。これは早くも物議を醸しそうな気配である。
支持者によれば、アルバイラク氏は、チャルクという新興財閥のエネルギー部門で頭角を現した後に政界入りしているので、その実力は既に立証済みらしい。テレビの画面を通して見る限り、確かに雄弁で説得力があり、さわやかな好青年というイメージだ。
エルドアン大統領の長女である夫人も、私はそれと知らずに、その発言、挙動を至近距離で見ていたことがあるけれど、やはりとても謙虚でさわやかな雰囲気だった。

アルバイラク氏の経歴を見ると、99年に入社し、2002~6年までアメリカの支社で勤務、翌2007年には社長の地位に上り詰めている。しかし、在米時代の2004年に、やはりアメリカへ留学していたエルドアン首相(当時)の長女と知り合って結婚しているから、その後は、首相の娘婿という利点を充分に使えたかもしれない。
また、アルバイラク氏の父親は、著名な保守派のジャーナリストであり、チャルク財閥が、2007年にサバ―紙などを買収してメディアの分野へ進出すると、アルバイラク氏と実兄はここでも重要な役割を果たしている。反対派にとっては、突っ込みどころ満載と言えるネタの数々である。
しかし、この財閥がISから石油を購入しているなどと何の根拠もない怪情報まで出回ってしまうと、なにが本当なのか訳が解らなくなってしまう。そういった怪情報、流言飛語は、フェトフッラー・ギュレン教団が伝えているものも多い。そんなカルトが垂れ流しているネタを鵜呑みしてどうするのだろう。
また、ネポティズム的な傾向は、AKPに限らず、トルコの社会の至る所で見受けられる。国営企業も多く、政府が大きな力を持っていたため、市場の競争原理より、軍や官僚、政治家に巧く取り入る方が重要だった時代が長く続いてしまった所為であるような気がする。
今、AKPに反対している古い財閥、ドアン系のようなメディア・グループも、そうやって軍・官僚に取り入って成長を遂げてきたのではないかと思う。
だから、さらに民営化を進めて、小さな政府にしていかなければならない、という意見がAKPを支持する識者に多くみられる。中には、アメリカ型の大統領制にすれば、政権交代は却って容易になるだろうと言う人がいて、これも一理ありそうだ。トルコのような社会で、長期政権は不正の温床になりやすい。二大政党による交代が望ましいというのである。
実際、野党勢力が最も勝利に近づいたのは、昨年の大統領選挙だった。エルドアン大統領が最初の投票で過半数に達していなければ、どうなっていたか解らない。