メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ノーベル賞・韓国の報道

今年のノーベル賞では、科学3賞から初めて中国人の受賞者が出たと話題になっていた。
しかし、中華人民共和国の国籍に限らなければ、もう何人も中国人・華人の受賞者が出ていたのではないかと思って、ちょっと検索してみたら、やはり既に7人の科学3賞受賞者がいた。
この内の2名は、米国生まれの米国育ちらしいが、他の方々は、それぞれ台湾、香港などで成人したようである。
もちろん、中華人民共和国からも、これからどんどん受賞者が出て来るとは思うけれど、在外華人との人口比を考えたら、やはり、あの体制が今まで相当な妨げになっていたような気がする。
さて、韓国からは、残念ながら今年も受賞のニュースがなかった。
これでは話題にもならないが、どうしたことか、これを大きく取り上げた日本のメディアもあった。他人の不幸は蜜の味ということなのか。でも、そういうのはこっそり味わうのが大人の礼儀だろう。
一方、韓国のメディアでは、これが明日への課題として大きく取り上げられていたようだ。
ニュース番組でも、韓国人の科学者に、今後の展望を尋ねたりしていたけれど、日本への対抗心を露にして、性急な結果を期待する報道陣と異なり、科学者の方々は至って冷静に、現実的な視点から質問に答えていたのが印象的だった。
トルコ人のアジズ・サンジャル氏らが受賞した化学賞について伝える以下のYTNニュースでは、「韓国からいつ受賞者が出るでしょうか?」というアナウンサーの問いに、高麗大学の教授が答えている。
「近いうちに出れば良いですが、現実を直視しなければならないと思います。日本と良く比較されますが・・・」と、ここで教授は、訊かれもしていないのに、まず日本を引き合いに出す。
そして、1900年代にノーベル賞が始まった頃、日本には既に世界的な科学者がいたなどという話から始めて、ざっと日本の科学発展史まで説明していた。

노벨 화학상, DNA 복구과정 규명한 과학자 3명 공동 수상 / YTN 사이언스

他のニュース番組で、多分、物理学賞の発表を伝えるニュースだったと思うが、やはり「韓国の受賞者はいつ?」という質問に、回答者は、「天才的な個人が現れて受賞するのは、いつ期待しても良いが、そんなことで日本へ追いついたとは言えない」と、これまた性急な結果への期待をたしなめるような感じで答えていた。
日本人を悩ます歴史認識問題などでは、イデオロギー論争に終始して、現実を離れてしまうことが多いようだけれど、現実に即した科学の分野へ、反日などのイデオロギーが入り込む余地はそれほどないのかもしれない。
だから、社会活動の大部分を占めている現実的なビジネスの世界では、メディアに見られるほど、日韓も険悪になってはいないと思う。
文化的には近い所もあるから、かえって気心が知れて巧く行っているケースのほうが多いくらいではないだろうか。メディアで展開されている議論なんて余り気にしなければ良いのだ。