メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

犬の船旅

ボズジャ島へは、土曜日の朝、チャナッカレから出ている高速船で渡った。これに乗ったのは今回が初めてで、なかなか快適だったけれど、走行中は甲板へ上がることもできず、ちょっと船旅の情緒に欠けるところが残念である。
イスタンブールへ帰る月曜日の朝は、いつものように、対岸のゲイックリへ着くカーフェリーに乗った。
直ぐにフェリーの最上部まで上がって出航を待っていると、人懐っこい犬がそこらへんを走り回りながら盛んに愛嬌を振りまいている。
犬は、フェリーが洋上へ出ると、先端の席に座っていた私の足元まで来て、そのままそこに座り込んだ。そして、時々、頭を上げて海の向こうをじっと見ている。どうやら、私に懐いてくれたんじゃなくて、フェリーの行く先が気になっているだけらしい。
岸が間近に見えて来たら、犬はそこを離れて下へ降りて行き、ランプウェイの突端に立って、近づく桟橋を凝視し始めた。船内に飼い主らしき人は見当たらなかったけれど、まさか桟橋で犬を待っているのだろうか?
しかし、いざフェリーを降りる段になったら、ランプウェイの辺りは自動車や乗客でごった返し、私は犬の姿を見失ってしまった。飼い主が来ていたかどうかも解らない。
フェリーを降りると、そこにエズィネのバスターミナルへ向かうミニバスが待機していたので、私もそれに乗り込んだ。ミニバスは直ぐに出発して、長い桟橋を渡り、ゲートを通り過ぎ、一般道に差し掛かったが、そこでふと歩道のほうに目をやると、あの犬がとことこ走っているのが見える。
ミニバスはあっという間に犬を追い越し、犬の姿はミニバスの後方に去ってしまったため、あまり確かなことは言えないけれど、やはり周囲に飼い主らしき人の影はなかったように思う。
ひょっとすると、犬の家はボズジャ島にあり、彼は気が向いたら、一人でフェリーに乗って、対岸へ遊びに来るのかもしれない。そして、夕星が出る頃には、また島へ帰る。・・・夕星は、かがやく朝が散らしたものを、みな連れかへす・・・。

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