メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

これからどうなるのか?

2002年当時、“10%に達しない政党には議席が与えられない”という規定は、それこそAKPのように、イスラム主義と思われる政党、あるいはクルド系の政党が議席を得られないようにする為だったのではないかと思うけれど、政権に就いたAKPは、なんとも皮肉なことに、この規定のお陰で、得票率では一度も過半数へ達しないまま、13年間も安定政権を維持したのである。

ところが、今回の総選挙、これまで政党としてではなく、無所属でなんとか僅かな議席を獲得してきたクルド系政治グループは、昨年の大統領選でデミルタシュ氏が9%得票したのに自信を得て、“HDP”として選挙へ臨むことになった。

クルド和平交渉”を進めているAKPは、HDPが10%に達せず、クルド系政治グループが全く議席を得られない場合、交渉の窓口を失ってしまうばかりか、クルド系政治グループがまたもや武力闘争に転じることを恐れた為、表向きとは裏腹に、HDPが10%を越えるよう望んでいたのではないかと囁かれていた。

その為、3月、和平ムードのネヴルーズ祭が終わってから、エルドアン大統領がこれに水を差すような発言をしたりして、AKPとHDPの対立が激化し始めると、当初、反AKP陣営は、『これはHDPに10%取らせようという出来レースじゃないのか?』と疑心暗鬼で事態を見守っていた。

しかし、AKPにしたって、HDPが10%を越えるようだと、自分たちも50%の大台を越すのが難しくなる。これは非常に悩ましい問題だったに違いない。

結局、私は新聞にも余り目を通していなかったので良く知らなかったが、4月以降、エルドアン大統領とAKPはますますクルド勢力に対して攻撃的となり、調査機関のアンケートによれば、徐々にHDPが勢いを増し、AKPは支持率を下げて行ったらしい。

そして、選挙の結果、HDPの得票は13%に達し、AKPは41%に留まった。調査機関をいくつも使って、慎重に世論の動きを見極めながら選挙に勝って来たAKPにしては、随分お粗末な選挙戦だったと言えるかもしれない。

さて、昨日は、エルドアン大統領が、長年のライバル前CHP党首のバイカル氏とアンカラで会談したことが話題になっていた。

今回当選議員の中で最年長(76歳)のバイカル氏は、新国会議長が選出されるまで議長を務めることになるため、表向きは国会運営についての意見交換となっていたけれど、前日の夜、エルドアン大統領が、選挙地のアンタルヤにいたバイカル氏に電話して、急に会談を決めたうえ、大統領官邸ではなく、アンカラの住居として使っている外務省官舎へバイカル氏を呼んで、2時間以上に亘って話し合ったことから、『そんな長い時間、2人で何を話していたのだ?』と様々な憶測が飛び交っているようだ。

「AKPとCHPの連立じゃないのか?」と言う人もいる。CHPは前回(2011年)に僅かながら及ばない25%に留まったものの、AKPに続く第2党の位置を守っている。可能性が全くないわけじゃないらしい。

しかし、今のところ、最も可能性があるのは、やはり支持基盤が似通ったAKPとMHPではないのかと言う人が多い。

クルド和平交渉”は、HDPが国会に議席を得て、既に新しい段階へ入っているから、AKPとMHPの連立がその妨げになることはないという説もある。さあ、いったいどうなるだろうか?