メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ISIS

ISIS、所謂「イスラム国」の呼称について色々議論されているけれど、この世の様々な組織には、自称と異なる俗称で世間に知られている例も少なくないような気がする。
例えば、モルモン教と言うと、キリスト教とは全く異なる宗教ではないかと思えてしまうが、彼らの自称は「末日聖徒イエス・キリスト教会」のはずである。統一教会も「世界基督教統一神霊協会」という自称は、改まった報道などで使われる程度じゃないだろうか?
それで、ここでは、報道ってわけじゃないし、“イスラム国”という言い方には私も抵抗を感じているので、“ISIS”で通している。
“ISIS”が、どういう組織であるのかについては、日本でも報道されているような情報しか知らないが、なんとなく“規模が大きくグローバル化したオウム真理教”みたいな感じがしないでもない。
“ISIS”の母体となった集団は、ワッハーブ派の流れから来ているらしいけれど、ワッハーブ派は、“預言者の時代に戻れ!”という復古主義に基づいているそうだ。オウム真理教も“原始仏教”を標榜していたのだから、やはりちょっと似ているかもしれない。いずれも、現代の社会で行き詰った連中が、“現代”を拒否して時代に逆行しようとしたところから始まったような気もする。
その割には、双方とも現代的な武器を使用したりして、そのメンバーには、現代的な知識を身につけたインテリも多い。「自惚れているほどには世間が認めてくれない苛立ち」も共通しているのではないか。“ISIS”の場合、これに「イスラム教徒だから西欧で差別された」といった被害者意識を持つメンバーも加わって、一層ややこしくなってしまったのだろう。
しかし、日本や欧米で、現代的な生活に疲れた人たちの中から、「昔に戻ろう!」という発想が出て来るのは、全く理解できないわけでもないが、18世紀のアラビアで、ワッハーブ派のような復古主義が生まれたのは何だか本当に良く解らない。
その頃、西欧に後れを取ったと自覚したオスマン帝国は、既に西欧に倣った近代化を模索し始めていた。続く19世紀の初頭には、タンジマートの改革に着手している。
このオスマン帝国を受け継いだトルコ共和国は、さらに近代化を推し進め、一部の知識人は、西欧よりも先に出ようとしたのか“脱宗教”を目指したけれど、これにはちょっと無理があったかもしれない。でも、後を追う立場の者としては、当然の意気込みではなかったかと思う。
トルコでは、この“脱宗教”に反対したイスラム的な人たちも、マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」をやたらと引き合いに出したりして、なんとか西欧に追い付きたいという姿勢では余り変わらないような気もする。いずれも、この世は時代と共に進歩すると思っているのだ。
ワッハーブ派の人たちは、この進歩を拒否してしまったのだろうか? その現代の追従者たちも、西欧に後れを取ったことは密かに認めながら、その現実に背を向けて、拗ねているだけのようにしか見えない。

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