メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ベートーヴェンのロマンス

3ヵ月ほど前じゃないかと思うが、ネットに「ベートーヴェンは、なかなか艶福家だった」などという記事が出ていた。
ベートーヴェンは、独身のまま一生を終えたので、あまり女性にはモテなかったのではないか、恋焦がれながら、結局ロマンスを成就できなかったのではないか、と言われていたけれど、実際はそうでもなかったようである。
それどころか、当時の音楽界では、トップスターと言って良い存在だったから、非常にモテて、艶聞には事欠かなかったという説もあり、結婚しなかったのは、相手がいなかった為じゃなくて、どうやら多すぎた為だったらしい。
まったくふざけた話だ。私はそれまで、ベートーヴェンの「ロマンス1番」といった甘美なメロディを聴きながら、『これはロマンスに縁のない男が、有りもしない夢を追って作った曲だ』と信じて、幾度も涙を流してきた。『ロマンスなんてものを実体験で知っている奴には、この曲の本当の味わいは解るまい』なんて得意になっていたくらいである。
まあ、良く考えてみれば、音楽とか文学とか碌でもないことやっている奴らには、恋の道にも長けた痴れ者が多い。ベートーヴェンもその中の一人だったに違いない。これでは、「今まで流した涙の半分ぐらいは返してくれ!」と叫びたくなる。

しかし、“英雄色を好む”じゃないけれど、組織の長に立つような男には、ロマンスぐらいないと困るかもしれない。自分を省みて思うが、なんでも望んだら成就させる“気”が無ければ、長なんて務まらないだろう。
でも、音楽やるのに“政治力”までは必要無さそうだから、たまには“ロマンスに縁の無い作曲家”がいても良いんじゃないかと期待していたが、やはり“一芸に秀でる者は大概の芸に秀でてしまう”ようである。指揮者とかやっている人たちみたら“政治力”も凄そうだ。
ベートーヴェンは、56歳で死んでしまっているし、最晩年にも名曲を残しているらしい。才能が枯渇した後も生き長らえて、“政治力”の方が際立つようにならずに済んだのではないだろうか。


BEETHOVEN - Violin Romance No 1 in G Major, Op 40 - HENRYK SZERYNG/Royal Concertgebouw/Haitink.