メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ポルターティフ~♪ マコト~♪

先日、仕事があるのかキャンセルになったのか、連絡が付かずに良く解らないまま、朝、所定の場所に行って、ぼおっと40分間、送迎の車を待ったが、結局、車は現れなかった。
家に戻って、始業時間になってから、連絡を取ったところ、やはりキャンセルになっていた。似たような出来事は前にもあったので、別段腹も立たなかったけれど、一抹のむなしさを感じて、妙な歌を思い出してしまった。
91年、イズミルはアルサンジャクの学生寮にいた頃、同部屋のトゥファンという学生が、何度も変な所作と共に披露してくれた歌だ。
足を前後に交差させながら、「ポルターティフ~♪ マコト~♪」と歌うのである。
ポルターティフは“ポータブル”のことで、当時、何かそういうポータブル商品のテレビコマーシャルが放送されていたらしい。トゥファンは、そのコマーシャルの振り付けを真似して、商品名の代わりに“マコト”を歌詞に入れて歌ったようだ。
ひょっとすると、私はその頃もよっぽど軽い人間に思われていたのかもしれない。持ち運び自由で取り付け簡単といったところだろうか?
アルサンジャク学生寮では、同じ部屋に大学生も高校生もいたが、“いじめ”も“使い走り”もなかった。先輩・後輩という序列も余り意識されていなかったと思う。自由で和気藹々とした雰囲気があった。
その中で、31歳と最年長者だった私にも特別な敬意などは微塵も感じられなかったけれど、もちろん苛められたり、使い走りをさせられたわけじゃない。でも、よく“からかわれる”存在だったような気もする。
当時より、さらに13年前に遡ると、私は日本の高校の寮で、それこそ酷く苛められていた。あれは“からかわれる”なんて愛嬌のあるもんじゃなくて、なかなか悲惨だったが、早々と抵抗を諦めてしまった所為か、万遍なく何処からも苛められた。
ところで、2012年だったか、日本のある小学校で、組替えの際、生徒たちに“同じ組になりたくない生徒”の名を書かせていたことが、社会的な問題になっていた。 
それが何で問題になるのか私にはさっぱり解らない。我が母校でも、寮の部屋替えの時にやっていた。けれども、私はつまらない信条を守って誰の名も書かなかった。その結果、最も恐れていた相手とまた同じ部屋にさせられて心臓が止まりそうだった。そして、また同じことが繰り返された。
当時、先生方はそういう事態を少しでも防ごうとしてくれたのだろう。しかし、後になって「誰それの名が一番多かった」なんて情報の一部をもらした先生もいたという。 
私が一時帰国すると、いつも世話になっている2人の友人は、その漏洩されたリストで上位に名前が上がっていたそうだ。特に、帰国の度に、蹴りや叩きで荒々しく歓迎してくれる友人は、断トツの一位だったと言われている。 
それで、代表的な“いじめられっ子”だった私が、何故、あの凶暴な“いじめっ子”の大将たちと親しくしていられるのか不思議に思う人もいるらしい。 
でも、ああいう典型的な昔の不良、番長タイプの奴は、決して陰湿ないじめをやるわけじゃない。虫も殺さぬような顔した人のほうが、よっぽど恐ろしいことをする。残念ながら私は、それを身をもって学んでしまった。
さすがにこの歳になって、世間で苛められたり虐げられたりすることもないが、相変わらずうだつが上がらないため、今でも何だかポータブルに扱われているのかもしれない。しかし、そのお陰で、ちょっと違った視角が与えられ、色々学べる機会を得ているような気もする。
せっかく与えられたこの視角は、せいぜい大切にすべきじゃないだろうか。40分、待ちぼうけ喰わされたくらいで、むなしく感じてしまうのでは未だ修行が足りていないと思う。