メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

スーパーマーケット“エルジエス2”

先月、ご近所のハジュ(巡礼者)ことムスタファさんが経営するスーパーマーケット“エルジエス2”が、隣の大きなビルに引越して新装開店した。このビルのテナントには、写真屋さんや家電修理屋さんも入っている。

なんで“エルジエス2”と「2」が付くのかと言えば、ムスタファさんの兄が経営する“エルジエス”というスーパーが、少し先に元々あるからで、ムスタファさんは数年前に独立して“エルジエス2”を開店したらしい。

しかし、今回の新装開店で、「2」は本家よりも大きくなった。また、外装をイスラムの聖なる色である“緑”で統一したり、看板にオスマン帝国スルタンのトゥーラ(アラビア文字の署名)をあしらったりして、ハジュ(巡礼者)らしい独自色を打ち出している。

ムスタファさんは巡礼に行ったわけじゃないが、頭にターバン巻いたりして気取っているため、多少嘲笑的にハジュ(巡礼者)と呼ばれているようだ。本家のエルジエス・スーパーに、ああいう格好している人はいないから、家族の中で、おそらくムスタファさんだけが、何処かの教団か何かに影響されたのだろう。

ムスタファさんは、独立して経営に乗り出すくらいだから、商売熱心で、朝8時頃から夜11時頃まで店を開け、バイラム(宗教上の祝祭)にも休業することはなかった。そうやって、新装開店まで漕ぎ着けたに違いない。

大手スーパーが遠くから来る顧客のために“サービス車”というミニバスを運行しているように、ちょっと小さいけれど“顧客サービス車”も用意した。もっとも、あの車には3人しか乗せられないから、配達などに使うつもりなのかもしれない。

従業員のユニフォームも作った。緑色のポロシャツに“エルジエス2”と記されている。レジ係りの女性には、白地のジャケットも用意した。

以前、“エルジエス2”で働いていたアイセルさんは嫁いで辞めてしまったが、彼女はスカーフも被らない代わりに派手なお洒落をすることもなく、仕事熱心でユニフォームのような作業着も厭わずに着ていた。

しかし、今働いている若い娘2人は、スカーフこそ被っているものの、派手にお洒落して、暇があれば携帯を弄っているような現代っ子風である。ムスタファさんが白地のジャケットを持って来て着るように命じたら、「これ格好良くないから嫌よ」と駄々を捏ねた。

ムスタファさんは困った顔しながら、「でも、職場の規律のために着てもらいたいんだよ」と説得を試みていたが、自分の頭の上のターバンは“職場の規律上”問題にならないらしい。

その翌日、また買い物に行ったら、レジに座っている娘は一応ジャケットを着ていた。おまけに“ファトマ・某”と姓名が記されたネーム・プレートまで付けている。『ムスタファさんも結構やるねえ』と感心した。

しかし、暑い所為かもしれないが、ジャケットは余り流行らなかった。数日したら、レジの娘たちも長袖のポロシャツだけになり、ネーム・プレートは何処かへ行ってしまった。職場の規律を確立するのは、なかなか難しいようである。

 

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