メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エルバカン氏~エルドアン氏

トルコで90年か91年頃、テレビ局のスタジオに著名な政治家などを招き、併せて、その人物の親族や友人たちも紹介するという番組があったらしい。
当時、イズミルに滞在していた日本人の友人から聞いた話だけれど、友人は、スタジオに招かれたネジメッティン・エルバカン氏(故人・元首相)の親族や友人たちの多くが、割とハイソサエティーな雰囲気の人たちであったことに、多少違和感を覚えたという。
何故なら、エルバカン氏は、庶民的な支持者の多いイスラム守旧派政党の党首だったからである。友人によれば、同じ番組に出演したスレイマン・デミレル氏(元首相・元大統領)の親族のほうが遥かに庶民的だったそうだ。
エルバカン氏もデミレル氏も、イスタンブール工科大学の出身だが、貧しい農家に生まれ、義務教育以降は全て奨学金によって学んだというデミレル氏とは異なり、エルバカン氏は、祖父がオスマン帝国時代に副裁判長を務めた家柄の生まれだそうである。
1997年、軍部の圧力により失脚したエルバカン氏の後を継いでイスラム守旧派政党を率いたレジャイ・クタン氏もイスタンブール工科大学の出身だった。
いつだったか、親戚の結婚式に出席したクタン氏と親戚らの写真が掲載された新聞の紙面を見て、私も多少違和感を覚えた。親戚の中には、スカーフなど被っていないモダンな雰囲気の女性も少なくなかったからである。
エルバカン氏らが率いたイスラム守旧派政党、そしてその母体となった“ミッリ・ギョルシュ(国民の思想)”には、例えば、ヌーマン・クルトゥルムシュ氏のように、家柄も学歴も申し分ない人物が多い。他のイスラム運動に比べて、“ミッリ・ギョルシュ(国民の思想)”は、非常にエリート的な集団だったのではないだろうか。
だから、その中で現首相のエルドアン氏は、ちょっと異彩を放っているかもしれない。しかし、エルドアン氏も、その“エリート集団”内の競争を勝ち抜いて、今の地位を得たはずである。反対派は、針小棒大に色々なことを書き立てているようだけれど、特に非常識で見識に欠ける人物であるとは、とても考えられない。
これまでの12年を見る限り、政治手法も、何らかのビジョンを掲げて、ぐいぐいその方向へ引っ張っるというより、いくつもアドバルーンを上げながら、落としどころを見極めて行く手堅いやり方が主だったような気がする。とても粘り強い。信長型というより、家康型じゃないかと思う。

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