メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

この世のリスク

2年ほど前、第五福竜丸被爆事件について、検索してみたところ、事件の54年後に取材された記事が出て来た。その記事によると、23名の船員のうち、11名が取材当時も存命であるというので、ちょっと意外に感じた。
また、事件後に亡くなった方は、火傷等の治療の為、輸血を行ったら、C型肝炎に感染して亡くなったと言う。私は子供の頃に教わって以来、あれは放射能によるものだと信じていたから、少なからず驚いた。
でも、それより驚いたのは、こういった事実にも関わらず、放射能の危険性のみが強調され、「54年間も苦しみ続けている船員の方たち」といった記述に終始していた点だ。

全身火傷を負われた方たちは、ガスや油等、その原因が何であれ、長期間に亘って苦しまれているに違いない。それがまるで全て放射能によるものであるかのように記されていた。
最初から「放射能は非常に危険である」と決め付け、どんな新事実に遭遇しても、その論調を変えないのであれば、新たに取材する意義はあるのだろうか。
トルコでは、肉類や油脂が多い食生活の所為か、60歳代で、心臓病や脳卒中などにより亡くなる方が少なくない。トルコの人なら、上記の記事を読んで、75歳や80歳という存命船員の方たちの年齢に驚くだろう。
コレステロールや塩分・糖分の取り過ぎも、放射能に負けないくらい危険かもしれない。
だからと言って、放射能は危なくないとか、原子力発電所は安全であるという結論には、もちろんならない。

原子力発電所で事故が起きてしまった場合、現在の技術力では、制御し切れないことが既に証明されている。これからも、廃棄物の問題や、原子力の危険性はもっと明らかにされて行かなければならないだろう。
しかし、一方的に決め付ける論調ばかりまかり通るようになれば、正しい指摘も、そういった論調の中に紛れ込んでしまい、説得力を失ってしまうのではないかと思う。
私に科学的なことは良く解らないが、まだ原子力には相当な未知数が残されているらしい。つまり、知られている以上に危険である可能性も否定できない(もちろんその逆も)。

とはいえ、池田信夫氏によれば、石油や石炭による地球温暖化の危機も未知の領域であり、その危険性はどのくらいの規模に達するのか未だ解らないそうである。それ以前に、石油や石炭の輸入がこのまま増加し続ければ、日本は経済的にまいってしまうだろう。
そうなると、リスクのない安全なエネルギーは、太陽光や水力等しか残されていないが、今の技術力では、こういった再生可能エネルギーを目一杯活用したところで、とてもじゃないけれど、日本の電力需要を賄い切れないという。
あとは省エネに励むしかない。でも、省エネシステムの導入はともかくとして、我々人間が一度覚えた贅沢を簡単に棄てられるのかどうか甚だ疑問である。
30年前は、産廃屋に冷房完備のダンプなんてまずなかった。夏は、現場の作業で汗びっしょりになり、運転しながらまた汗をかき続けた。

あの頃は、冷房のないラーメン屋さんも多かった。夏になると、汗をボタボタ垂らしながらラーメンの汁を最後まですすったりしていた。

今、東京に冷房のないラーメン屋さんがあるだろうか。やっても商売にならないに違いない。私も多分そういうラーメン屋さんには入らないと思う。
そもそも、省エネを主張しながら、私ほど省エネな生活を営んでいる日本人は、余りいないような気もする。

もっとも、私の場合は、収入が限られている為、地味な生活を強いられているだけで、何の自慢にもならない。