メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ソーセージ~ココレチ

先日、ソーセージについて、ちょっと調べたところ、ユダヤイスラムにとっては、豚肉のソーセージばかりじゃなくて、血が入ったブラッドソーセージも禁忌であることに気づかされた。そういえば、血が禁忌となっている為、屠殺の際に頚動脈を切って、充分血抜きするのだった。
イスラムの禁忌に関する質問に答えるトルコ語のウエブサイトを見たら、やはりレバー等の内臓を食べてよいのか質問が寄せられていて、解答は「食べて良い」となっていた。ところで、厳密には肉もそうだが、レバーの完全な“血抜き”など果たして可能だろうか?
いずれにせよ、トルコでは、レバーが一般的な食材として、様々な料理に使われている。敬虔なムスリムも含めて、レバーを嫌がって食べない人は、あまりいないような気がする。いまさら禁忌だなんて言われても困ってしまうのではないかと思う。
しかし、他の内臓、胃や腸については、結構嫌がる人も少なくない。特に、腸をぐるぐる巻いて焼いたココレチや胃のスープ“イシュケンベ”には、かなり抵抗があるようだ。
かつて、エーゲ海地方のアイドゥン県では、胃や腸を文明的な食材じゃないとして禁止しようとしたことがあった。アイドゥン県にも、ヨーロッパ風な生活スタイルを好む政教分離主義的な住民が多いけれど、ココレチやイシュケンベを嫌がるのは、イスラム的というより、どちらかと言えばヨーロッパ志向の強い脱宗教的な人たちである。
「ココレチやイシュケンベを食べていると、ヨーロッパに入れてもらえない」などという話を広めていたのも、このヨーロッパ的な人たちだった可能性が高い。彼らは、イシュケンベには付きもののニンニクや生玉ネギも「臭い」といって嫌がる。
けれども、ヨーロッパにだって内臓料理はたくさんあるし、ニンニクもイタリア料理にはかなり使われているのではないか。ヨーロッパの人たちが「ココレチやイシュケンベを食べている人たちは入れてあげない」なんて言うとは、とても考えられない。
ニンニクや生玉ネギについては、預言者ムハンマドが、礼拝の前に食べたりしないよう注意していたそうだ。ひょっとすると、ヨーロッパ的なトルコ人が、ココレチやイシュケンベを嫌がるのは、自分たちが気がついていないだけで、イスラムの伝統に由来しているのかもしれない。
食に禁忌を持ち込むのは、そもそもが、なんとなくユダヤイスラムを想起させる。フランス人など、それこそ何でも食べてしまいそうだ。 

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