メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

セマウル運動

数年前、韓国まで行って、その経済発展の過程を調べてきたトルコ人の友人がいた。彼は左派のジャーナリストで、朴正煕大統領が推し進めた“セマウル運動”の社会主義的な性格に興味を懐いたのが、韓国研究のきっかけだったそうである。
トルコでも、1940年代から50年代の半ばにかけて、“農村研究所”という農村の啓蒙を目的とする機関が各地に設立されていたが、宗教を蔑ろにしたりした為、農民の反発を買い、あまり巧く行かなかったらしい。
人は誰しも、そこに経済的な利得があれば、ある程度順応して少しずつ慣習も変えて行くだろうけれど、生活条件は全く変わらないのに、“啓蒙”されて、自分たちの流儀を改めたりすることは余りないと思う。
一方、“セマウル運動”は、経済発展の中で一定の成果を上げたと言われている。しかし、韓国の農村社会は、結局、それほど変わらなかったという話も聞かれる。むやみに競争を煽って、農村間に敵対意識を生じさせたなど、負の側面もあったようだ。
イズミルの崔(チェ)さんに、「“セマウル運動”に興味を懐いて、韓国で経済発展を調べて来たトルコ人の友人がいるんだが・・・」と話したら、超現実主義者の崔さんは、「おい、そのトルコ人に言ってやれ。韓国が経済発展したのは、朴正煕大統領が日韓国交正常化により、日本から経済協力金を得て、それを巧く使って産業化を図ったからだ。他に何もない。セマウル運動なんて全く関係ない!」と、いつものように話をもの凄く簡単にして切り捨てていた。
彼が興味を示すのは“儲け話”だけだ。だから、「こんなホームページ書いてます」なんて明かしたら、「おまえは馬鹿か?」と言われそうなので、そういう話は殆どしていない。崔さん、歴史認識とか竹島とか、やはり儲けにはならないから全く興味なし。ビジネスの相手は、何処の国の人間でも皆同じ。単純明快! 
こんな韓国の人もいる。決して少なくないと思う。でも崔さん、その割には余り儲かっていない。儲けようと思ったら、まず手始めに、この役立たず日本人との友誼を切り捨てたほうが良いかもしれない。
そうだ、今思い出したけれど、6月の“ゲズィ公園騒動”で、かつては崔さんも学生運動やっていたことが解って驚いた。民主化には興味があったのか・・・。
多分、崔さんは、朴正煕大統領の功績をある程度評価していても、“漢江の奇跡”などと言って、殊更美化する気持ちはさらさらないだろう。
そもそも、私が“漢江の奇跡”を称賛したくなる背景には、『韓国の人たちがこちらを誇って、反日をやめてくれたら・・・』というせこい考えが見え隠れしている。まあ、“漢江の奇跡”を全否定したがるイデオロギーも困ったものだが・・・。
今日、“セマウル運動”についてネットで調べてみたら、日本語のページに「“セマウル運動”の源流は、日本統治時代の農村振興運動である」と記されていた。これを史実として、私たち日本人に伝えるのは良いけれど、「だから、日本の統治は良かった」と韓国の人たちに言うのは、どうかしていると思う。
当時、誠意をもって地元の人たちを指導した日本人はいたかもしれないが、それはあくまでも“日本のため”であって、“独立する韓国のため”じゃなかったはずだ。